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公園でくつろぐオーストラリアの人々。

 

日本では北欧諸国の高齢者福祉を理想とする人が多いが、オーストラリアの高齢者福祉も別のアプローチとして大いに参考になる。

乱暴に要約すれば北欧は高い税金で公的福祉サービスを充実する高福祉高負担型。オーストラリアは行政だけでなく教会などの非営利団体あるいは株式会社など多様な主体がサービスを提供しそこから選択できることをめざす。アメリカが低負担、低福祉で民間中心、自助努力でやっているのとも異なり、中負担中福祉で「選択」がキーワードとなっている。

私もオーストラリアに着任以来たくさんの高齢者福祉施設を見学したが、正直なところ施設や設備は日本の方が高性能で新しいものが多い。しかし値段は日本がメチャメチャに高い。

日本に比べ土地が安いせいもあるがオーストラリアでは広いスペースで必要な機能だけを備えた施設が日本の四分の一から一〇分の一程度の費用で建設されている。日本は入浴設備など過剰な性能の設備にお金をかけているのではないかと心配になるくらいである。施設・設備より参考になるのはソフト面である。運営にかかわるマネジメントが重視され、高齢者の尊厳、自己決定の尊重、生活の質への配慮が行われている。

それを可能にしているのは、高齢者施設への監査、高齢者や家族のサービスへの苦情を聴くシステムで、悪いサービスの施設や業者には補助金がストップされる。日本では認可を受けるまでは大変だが、認可を受けてしまえば、その後はよほどの事件、事故を起こすか、内部告発がない限り、補助金がストップすることはないのと対照的である。

オーストラリアも一九八五年の高齢者福祉改革までは施設を重視していたが、その後在宅サービスを重視するようになり、現在では九四%が自宅に生活している。

 

 

 

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