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医療機関四か所と、一二の患者宅を結んでリアルタイムでの遠隔医療を試行している。訪問看護に出かける保健婦が端末機を携帯し、高齢者宅から医療機関に心電図や心拍数などのデータを送信する試みも行っている。

このシステムを導入すれば在宅医療の質は格段に上がり、いわゆる社会的入院をしている高齢者が自宅に帰ることができる。それは「医療費の抑制につながり、何よりも介護を必要とするお年寄りの安心感を高めるものになる」(大島町福祉係長の舛本公治さん)。

 

モデル居住圏のフィールドとして

 

周囲を海に囲まれ、四町で一郡を構成する周防大島は、その地理的条件といい、人口構成といい、超高齢社会に生きる高齢者のモデル居住圏を模索するには最もふさわしいフィールドである。それだけにモデル居住圏構想にかける県や国の期待は大きく、山口県は大島四町の実験の成果を全県に広げていく考えだ。大島町の遠隔医療システムは九八年度の厚生省のモデル事業として採択された。

山口県は高齢者介護にかかわる人材の育成も、大島四町をフィールドにして昨年度から取り組んでいる。社会福祉士をめざす学生の実習の場として島を提供する「社会福祉士モデル実習事業」だ。

今年度は山口県立大学から六名、日本社会事業大学から四名の学生が実習に訪れ、八月の終わりからの一週間と一〇月の二週間、ここでホームステイしながら在宅介護と施設介護の両方を体験し、各町の集落ごとにお年寄りが集う「ふれあいサロン」などにも参加した。

こうした若い介護のマンパワーを県内に定着させることも、大島をモデル居住圏のフィールドとする県の狙いの一つである。

 

 

 

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