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そこで旅人は尋ねた。

「この家は、あなた様がお住みになる前はどなた様がお住まいだったのですか?」

「オレの父親と母親だよ」

「その前は?」

「じいさんとばあさんだ」

「それでは、もしあなた様が天国に召された後はどなた様がお住まいになるのですか?」

「オレの息子たちだよ。それがどうかしたのか?」

「いえ、でもお話を伺いますと、この家も宿屋みたいなものじゃないかと思って……」

じっと考えていた主人は、やがて「わかった」と、深くうなずいて泊めてくれた。

人間は、裸で生まれてきて、身一つで死んでいくものです。自分の財産といっても、それは自分が生きている間の、束の間の借り物に過ぎないのですね。財産は、誰かから、いろいろな形で受け取って、いつかは誰かに渡していくもの。どうせ渡すのなら、喜んでくれる、そしてその財産を本当に生かすことができる人に渡すのが一番いい方法です。

あなたのお考えは正しいと思います。ご先祖様もわかってくれるはずですよ。

 

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