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当世高齢事情 No.7

 

社会の高齢化により、従来の慣習や一人一人のものの考え方もどんどん変わってきました。特にお金が絡んでくると問題はさらに深刻。そんな当世の高齢事情をもっとも身近に見ている公証人の方に道しるべのアドバイスをお願いするシリーズ。さて、あなたはどんな生き方を選択しますか?

 

財産は借り物

回答者 清水勇男

蒲田公証役場・公証人

 

Q 子供は男の子が二人いるのですが、二人とも大学を出て都会で就職し、田舎には帰って来てくれません。主人は三年前に亡くなり、先祖から受け継いだ広い田畑が残されました。私は六〇歳になります。私一人では耕作できませんので、昔、私のところの小作人だった農家の人に手伝ってもらっています。田畑も隣合わせで、しっかりした跡継ぎにも恵まれています。ただ、持っている田畑の面積が狭く、もっと広いといいのだが、とつぶやいていたことがあります。私は、田舎に帰って来る気持ちがまったくない二人の子供に田畑を相続させるよりも、私の死後はこの農家の人に差し上げた方がいいのではないかと考えまして、親戚の者に相談したら、そんなことをして先祖に申し訳が立つかと猛反対です。しかし、かといって血縁者に相続させようにも適当な人はいないのです。私は、自分の考えの方が田畑を生かすことになり、むしろ先祖は喜ぶのではないかと言ったのですが、聞き入れてくれません。どうしたものでしょうか。

A 私が大学生だったころ、ドイツ語のテキストにこんな話が載っていました。

夜、道に迷った旅人が、腹を空かせ、真っ暗闇の森の中をさまよっていると、遠くにポツンと灯が見えた。近づくと大きな民家である。ああ、これで野宿しないですむと喜び、戸を叩いた。出て来た家の主人に事情を話して泊めてくださいと頼んだところ、「ここは宿屋じゃないから泊めるわけにはいかない」とケンもホロロ。

 

 

 

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