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久田澄子さんと良彦さんは、澄子さんの夫が死亡してのち兄嫁と弟という義理の関係で二人暮らしをしています。共に七五歳。二人は早川さん主宰の社交ダンスクラブの常連。この縁で毎土曜の夜、早川さんが久田宅を訪れ、ごちそうを囲みながら家族のような絆を深めていました。

ところが早川さんが福祉施設の運営で忙しくなり、二人は大切な楽しみが減って意気消沈。そこで早川さん、自分の代役探しをはじめました。知人で、久田さんとハッピーな良縁になりそうな人を連れて来て見合いをさせたら、驚くべし、そのすべての人がぴったり合ったのです。

まずは四○歳代の独身で一人暮らしの大工さん。久田宅に来るや早速、家の中を見回し、手すりが必要だとか、階段の段差が不ぞろいで危険などと指摘、テーブルやイスの脚を切って楽な姿勢で食事を取れるようにしてあげました。一方彼の方は久しぶりのおふくろの味に涙を流さんばかりに喜んだといいます。

二人目は五五歳の公務員。妻も同業の共稼ぎ夫婦。彼も澄子さんの手作りの食事に感激。代わりに本業を生かして久田さんのための行政サービス関連のアドバイザー役を引き受けています。

三人目はアルコール中毒で何度も入院。妻に見放されても相変わらず酒におぼれる男性。彼も久田さんの心からの励ましに感激し、病院の送迎や買物の足代わりを引き受けています。

最近では近隣の人たちも久田さん宅にグチをこぼしに来るようになりました。代わりに買物をしてくれたり、家具の移動などの手助けをしてくれたりと、ここでも「ハッピーな良縁」が成り立っていました。

 

近隣型助け合いとは…?

お互いの顔が見え、生活の内情がわかりあっている近隣の住民同士が、お互いの心を大切にしながら、日常生活の営みの中で、『自然流』に身の回りのお世話や家事、介護、食事づくりなど生活するために必要なことを互いに支え合い、助け合うことをいいます。

 

 

 

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