(右)特養の『スーボー』を訪れ、廊下で入居者に声をかけるクリスーナ・ハーダーさん。 (左)入居者の部屋に入って話をするハーダーさん。
廊下を歩きながら居住者たちに声をかけるのはクリスーナ・ハーダーさん(七三)。上品な雰囲気が漂う女性だ。ハーダーさんは、ここの介護ボランティアグループ『スーボー・フレンド』の会長である。
にこやかな笑顔で入居者に近づき、テーブルに並んで腰を下ろす。近況を聞きながら相づちを打つ。
隣のテーブルでは、女性ばかりのヘルパー数人がタバコを手に談笑している。休憩時間のようだ。ハーダーさんに視線を送るが、くつろいだまま。毎日のように来るボンティアは施設に溶け込んでいる。同行したボランティアのエルサ・イヨンセンさん(六七)はドアを開けたままの住人の部屋に入って行く。「ちょっと待って」と歩み寄って車イスの女性(七四)が取り出した一本の葉巻に火を付けてあげる。
「葉巻が好きなんですよ、この人は数年前までは車を乗り回していたそうです」と紹介してくれる。
特養はすべて公設公営で
デンマークの特養は、すべてコミューンという日本の市町村に当たる地方自治体が設立し運営する。特養のほかホームヘルパーの派遣など高齢者介護は全国二七三のコミューンが、病院など医療は都道府県に相当する一四のアムトが受け持つ。