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最近はこうした疑似体験ができる機会が増えており、ニュースや新聞などでも折に触れ紹介されている。インスタント・シニア体験はカナダで開発され、日本では日本ウエルエージング協会がライセンス契約を行い実施している。一方うらしま太郎は、WACが日本人に合わせて独自に開発したシステムで特許を取得。装具の内容は異なるが、高齢者の視覚・聴覚・皮膚感覚の衰えや関節の不自由さ、筋力の低下を人工的に作り出すという点は共通のものだ。

さて、投稿の意見を早速、双方の団体に確認してみた。まず手続きについてだが、両協会とも「氏名、日時、人数、目的などを記入して申し込めばよく、日程調整に手間取ることもそれほどないはず」という回答だった。ただどちらも、体験セットだけではなく使い方の指導などを行うインストラクターの派遣を伴っており、その分手間や金額がかさむ。だからセットの貸し出しだけで済むと思って申し込むと多少違和感を覚えるかもしれない。だが「高齢者の身体を正しく理解してもらい、体験を生かすためには、インストラクターによる講習や指導は不可欠」(日本ウエルエージング協会小駒恭子さん)。WACからも同様の説明があり、確かにそれはうなずける部分でもある。誤った使い方だとせっかくの体験も効果が薄れ、万一の場合にはけがにつながることも考えられるからだ。

ところで金額だが、インスタント・シニア体験は、一日一講義当たりおおむね二五人以内二〇万円から、五六人以上およびイベントの場合の三〇万円までと段階があり、ある程度以上の規模の集まりが目安。これに消耗品(耳栓、手袋、テキスト)一人九〇〇円、装具運送費、インストラクターの交通費や地方なら宿泊費、障害保険料が加算される。小駒さんは「事前の下見や使用後の点検等、きちんとメンテナンスを行うためにはこのくらいになってしまう」と台所事情を語る。

 

 

 

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