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しばしば、アメリカのNPO組織運営論などを真似て、企業経営のやり方をNPOの組織運営に採り入れようとする運営論が主張される。NPOが組織として活動する以上、あらゆる組織に共通する運営の原理は採り入れなければならないが、それを越えて、職員の活動が「労働」として行われていることを前提とする組織運営の原理まで採り入れると、市民活動を行うNPOの運営から活力が失われ、心ある人が離脱していく結果を招く。注意を要する点である。

 

二. 解散について

日本のNPO(公益法人を含む)に関する法の仕組みは、日本の営利法人に関する法の仕組みと同様に、それが解散することなく活動を続けることがよりよいことであるという暗黙の前提で出来上がっている。

しかし、この前提は、特に市民活動を行うNPOにはそぐわないであろう。市民活動の生命は、多様にして次々に変動していく市民のニーズに、迅速かつ的確に対応していくことにある。従って、その活動内容や活動の仕方は、柔軟にニーズに対応するものでなければならない。ある活動が使命を終えれば速やかにその活動を行う組織は消滅し、もし生き延びるなら新たなニーズに応じる別の活動を行う組織に変容していくことが必要である。このことは、行政組織についても企業についても特殊法人などについても同じであるが、現実には柔軟な組織解消や組織変容ができないために、今日の制度疲労を招いているのである。行政組織や企業についてすらそうであるから、NPOにはより一層その要請が強いのに、NPO活動を行う人にも、NPOの仕組みの中で組織が存続することが至上命題だという認識でいることが多いように見受ける。

市民の支持を受けなくなった活動は、直ちにやめるし、支持を失った組織は速やかに解消するという腹構えで取り組みたい。それが、市民のニーズを常に真剣に探り、支持を集め続けたいと考えて行動する原動力になるであろう。

 

 

 

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