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基本は井戸端会議。馬鹿話をしては思い切り笑い、ついでに日ごろの悩みを出し合い、すっきりして帰って行く。「ここは心の病院だよ」と一人が言っていました。

誰かが来なかったら様子を見に行く。病気だったら看病し、病院に薬をもらいに行ったり、買い物をしてあげたりは当たり前。ここに来れば町の福祉サービスの情報も手に入るし、深刻な問題が出てきたら、誰かがヘルパーなどにつなげてくれる。まさにお年寄りたちの共同防衛基地になっていたのです。福祉の営みにはこのように、当事者同士が共同戦線を取るという方式もあるのです。

ところで、埼玉県のあるマンション(二〇〇世帯)でこんなことが起きていました。よくあるように、住人同士の交流がなかなか生まれない。エレベーターで出会ってもあいさつひとつできない。息苦しさに耐えかねた有志の女性(五人)が、集会室でふれあいサロンを開きはじめたのが一年前。お年寄りを主体に三〇数名が集まってきたようです。

先日そのサロンを訪れたとき、彼女らにこう尋ねてみました。「お年寄りたちは部屋へ戻ったあと、何かしていませんか ?」。すると、「そうそう、この中の何人かがそれぞれ気の合った二、三名を誘って、自分の部屋でまたサロンをはじめているようなんです」。だから自分たちはそろそろ撤退しようかと考えていたところだと。

地域にまだたまり場がないとき、呼び水としてサロンを開設するのはいいのですが、いずれはお年寄りが自分たちで自前のサロンを開きはじめるはずですから、そのとき「撤退」も選択肢の一つになることを頭に入れておいた方がいいでしょう。

 

近隣型助け合いとは… ?

お互いの顔が見え、生活の内情がわかりあっている近隣の住民同士が、お互いの心を大切にしながら、日常生活の営みの中で、『自然流』に身の回りのお世話や家事、介護、食事づくりなど生活するために必要なことを互いに支え合い、助け合うことをいいます。

 

 

 

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