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といっても彼女はプロデューサー役で、企画運営は周りの人たちでやってくれるらしいのです。

その後もあちこちで「開いた家」の活動を見てきましたが、だいたいこんな具合になるようです。K子さん宅が「全開きの家」とすれば、数年するとそのスペア役程度はできる「半開きの家」が二、三軒、そして彼女の手伝いぐらいならできる「小開きの家」が十数軒できる、と。

彼女の近くに住む女性が言っていました。「K子さんのおかげでここは、子供に何かあるとみなが飛び出す横丁になった」と。事実近隣全体が変わってくるらしいのです。たとえば今まで休業日にわが子だけをドライブに連れて行った人が、最近は近所の子供らに「みんな一緒に乗れえ」。勤め帰りに花火を買い、わが子と楽しもうとした人が、どうせなら近所の子も、となったとか。

もっとおもしろいのは、K子さんのような家に近所の悩み事も押し寄せるという点です。「ああいう人だから私の困り事も解決してくれるだろう」と思うのでしょう。それを受け止めるから、またやって来る。つまり、開いた家には福祉問題も、またその解決活動のお手伝いさんも近付いてくることがわかったのです。

我孫子市のT子さんは三〇年以上も近隣の高齢者を自宅に招き、毎月サロンを開いてきました。たまに私も訪問してみたのですが、やはり同じ「公式」が働いていました。彼女の代わりをしてくれる人が二人ほどできたし、サロンを開く日には近所からおかずなどのおすそわけが届くと言っていました。

どうやら数十軒に一軒はK子さんのような資質を持った人がいるようです。その人で近隣起こしが割合たやすくはじまるのです。

 

近隣型相互助け合いとは… ?

お互いの顔が見え、生活の内情がわかりあっている近隣の住民同士が、お互いの心を大切にしながら、日常生活の営みの中で、『自然流』に身の回りのお世話や家事、介護、食事づくりなど生活するために必要なことを互いに支え合い、助け合うことをいいます。

 

 

 

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