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それにしても現在は福祉用具があまりに特殊視され過ぎてはいないだろうか。その理由は、日常生活であまり見かけないこと、値段が高いこと、流通経路が特殊でどこで買えるのかわかりにくいこと、などだ。介護保険の実施によって、福祉用具がすべての人々の生活を楽にする道具として誰でもが上手に選べ、使いこなせるようになれば、もっと「普通のモノ」になるだろう。

要支援・要介護高齢者の自立支援と生活支援は、介護保険の対象となっている福祉用具だけではなし得ないことは言うまでもない。保険の対象外のさまざまな福祉用具、適切な配慮のなされた一般的な生活用具も生活の質を向上させるためには不可欠である。特に、障害者・高齢者向けの配慮がほどこされた製品(共用品)の普及は、特殊な用具によらず、人々の生活を支援し、社会参加を促すことを可能とするものであり、今後、企業の積極的な取り組みと消費者の啓発が求められる。

 

●通商産業省の福祉用具産業政策

通商産業省としては、次のような政策を推し進めている。1]福祉用具の安全性・品質基準の確立、2]福祉用具評価・情報ネットワーク構築による情報共有。そして3]共用品の普及推進である。お年寄りや障害者も含めたすべての人々にとって使いやすい、いわゆる「共用品」の開発・普及を促進するため、どんなものが共用品であるのかをわかりやすくするためのマーク制度の創設なども検討している。

日本では「介護=人手」という意識が、介護者にも被介護者にも根強く残っているが、福祉用具は介護者の負担を減らすだけでなく、被介護者の生活の質を高め、また生活自立と社会参加を促すことによって尊厳ある人生を全うすることを助けるものだ。「暖かい」人の手による介護を「冷たい」機器によって代替するというより、むしろ人手による介護をサポートし、補完する「モノ」こそ真の福祉用具なのである。

 

 

 

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