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そこで「支援住民の会」は町田市民でつくる「公的介護保険を考える市民の会」に“合流”して、介護保険が施行されても市が現在、実施している高齢者福祉サービスの質と量を低下させないよう請願書を町田市議会に提出した。請願内容は次の通りである。

1] 食事サービス、移送サービスの継続・充実

2] 高齢者が要介護者にならないための予防施策

3] 住宅改造、住宅改造アドバイザー制度の継続

4] 以上の対策が高齢者の自己負担にならず、介護保険料に上乗せされないようにすること

このうち 2]の「予防介護」は「支援住民の会」が市に先んじて着手した。一人で閉じこもりがちな独居老人らに昼間、集まってもらい、心身を活性化して痴呆症にならないようにするサービスだ。気楽に集まり気楽におしゃべりをし、気楽に手作業をする『きらく会』と名付けた。成瀬台小学校の図書室と成瀬台中学校の視聴覚教室を会場に充て、月に三、四回、平日の午後に開く。参加料はおやつ代として一回三〇〇円。また障害を持つが六五歳未満のため介護保険の給付を受けることができない人々のためのデイサービスも月二回はじめている。場所は町内会館を借りた。料金は一人三〇〇〇円。今年からホームヘルプ・サービス(一時間一一〇〇円)も開始した。

住民参加型福祉の原点は、地域に暮らす人と人が絶えずふれあい、相手の生活を気にかけ、思いやるところにある。『ケアセンター成瀬』の「支援住民の会」がするホームヘルプ・サービスは、お年寄りからの電話一本で電球の付け替えに飛んで行く。町田の先駆者たちは、こんな地域の温かさと強みを最大限に発揮して、地域の老後は地域の手で支えるという「介護保険の法の精神」を先取りしてきた。だが一方で、介護保険がスタートすると、より現実的な対処も必要になる。「保険」という名の市場原理は、株式会社であろうが非営利団体であろうが、等しく及んでくるからだ。利用者主体の熱い思いをどう介護の現場に反映させていくのか、住民も自治体もしっかりと見定めていくべき課題である。(写真提供/木村松夫)

 

西嶋公子創和会理事長の話

「介護保険がはじまると要介護認定からはずれる人や給付外のサービスを必要とする人が続出するのは必至。そうした介護保険や自治体独自の制度ではカバーしきれない人たちを救うインフォーマルなサービスの担い手として住民自身の手になる地域ケアの役割はますます重要になります。それを『レース編みのセーフティネット』と呼んでいますが、住民が必要とするどんなニーズも漏らさず受け止める、きめ細かい福祉の編み目をつくれるのは住民による地域ケアしかありません」

 

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