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高齢者在宅サービスセンター『ケアセンター成瀬』。東京のベッドタウン、町田市の緑濃い静かな住宅地、成瀬台にある。医師、主婦、自治会、子供会のリーダーや世話役ら、その町に住んで老いてゆく人々が、「自分たちの老後は自分たちの手で支えていこう」と、専門家や経験者の知恵を借りて九六年春に開設した、住民による住人のための高齢者介護施設だ。建坪一七九〇平方メートル、地下一階、地上二階建て。お預かりするお年寄りの定員はデイサービス(日帰り介護)が一五人とショートステイ(短期入所介護)一〇人、合わせて二五人の高齢者を一六人の専従職員と三五〇人のボランティアが交代でお世話する。

設立・運営主体は社会福祉法人「創和会」(理事長西嶋公子氏)。これを「支援住民の会」(事務局長小竹金次氏)と呼ぶ地域市民のネットワークが支えている。「ええ、ここは社会福祉法人の設立から建物の設計、ボランティアの派遣など運営まですべて地域の住民自身がしてきたんです」。ケアセンター設立に初めから携わってきた「支援住民の会」事務局の岩崎寿美男さん(六二)はエプロン姿で誇らしげに、その背景といきさつを語ってくれた。

現在の会員は一三四五世帯、二一五七人。年会費二〇〇〇円で余力のある人はボランティアとしてセンターの仕事を手伝う。ボランティアは三五〇人。調理、掃除、庭の手入れから、お年寄りの話し相手や一緒に手芸や習字をしたり、碁の相手など毎日三〇数人がかかわっている。小学生のボランティアグループもある。会員のみんなが「将来、自分もここのお世話になると思う」(岩崎さん)から行き届いたお世話ができるのだろう。

町田市は一九六〇年代後半から急速に住宅団地の建設と宅地造成が進み、人口が膨脹した典型的なベッドタウンだ。いわゆる新興住宅地だった成瀬台は七三年に初めての建て売りの分譲が行われてから、何もない丘陵地に学校を建て、道路や下水道を整備し、バス路線を誘致した。自治会が中心となって行政と交渉し、生活環境を整えてきた。子育て世代の若い夫婦が大勢ほかの町から移り住んできて、子供会活動も盛んだった。岩崎さんは、このころから町田青少年育成の会や自治会の連合会の結成などの世話を焼いてきた新住民のリーダーだった。

 

 

 

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