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それほどこの行動パターンは広く普及しているということでしょう。たとえば新潟県柏崎市では、九〇歳を少し過ぎた寝たきりの男性が、土間のすぐ脇に寝かされているらしい。介護しているのは(九〇歳近い)妻ですが、たまたま郵便配達や新聞配達の人がやって来たり、通りかかったりすると、「ちょっとアンタ、おむつの交換を手伝って!」と引っ張り込むのだと!「飛んで火に入る」なんとやらで、したたかなおばあちゃんです。

また、重度のリューマチで苦しんでいるIさんという女性。通りで見かけた知り合いなら、誰かれかまわず、「お願い、公民館まで運んでね!」。フィリピンから嫁いできて、なかなか地元になじめずに苦しんでいる女性に接近、日本語を教えたり、英会話教室を開く手伝いをする一方で、Iさんの手足となってもらっているようです。

そういえば障害者たちがこれと同じ方法で自立生活を送るのが大流行しています。ある三六歳の脳性まひの女性。「いつまでも両親が生きているわけではない。今のうちから自立しておこう」と発奮。「私の介助者、募集」のチラシを配って回り、応募してきた三〇数名の人たちに介助の仕方を教え、上手にローテーションを組ませて、今、アパートでしっかり一人暮らししています。「私を助けさせるプロデューサー」になっているのです。最近はケアマネージャーが大人気ですが、障害者の間ではむしろ「セルフ・マネジメント」のノウハウを教え合っています。こうした「助けられ上手さん」がいれば、近隣の助け合いは造作もなくはじまることがわかるでしょう。「当事者が主役」−これが住民の流儀のもっとも重要な柱なのでした。

 

近隣型助け合いとは…?

 

お互いの顔が見え、生活の内情がわかりあっている近隣の住民同士が、お互いの心を大切にしながら、日常生活の営みの中で、『自然流』に身の回りのお世話や家事、介護、食事づくりなど生活するために必要なことを互いに支え合い、助け合うことをいいます。

 

 

 

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