当世高齢事情 No.2
社会の高齢化により、従来の慣習や一人一人のものの考え方もどんどん変わってきました。特にお金が絡んでくると問題はさらに深刻。そんな当世の高齢事情をもっとも身近に見ている公証人の方に道しるべのアドバイスをお願いするシリーズ。さて、あなたはどんな生き方を選択しますか?
妻から突然「別れたい」と
回答者 清水勇男
蒲田公証役場・公証人
Q 商社を定年退職した六二歳の男性です。娘三人は嫁ぎ、郊外のマンションに妻と二人で住んでいます。いや、住んでいたというのが正確です。年金の他に四部屋あるアパートからの家賃収入があるので、老後の生活に困ることはありません。ところが、アパートの一室が空いたとき妻が突然別れたいと言い出し、自分の身の回りの荷物をまとめてこの空き部屋に移ってしまいました。妻は、そのアパートを財産分与としてもらえば家賃収入で生活していけるので、離婚してくれと言っています。
外国勤務を含めて、たしかに転勤の多い会社でした。老母と娘三人の世話は妻に全部まかせ、私はほとんど単身赴任でした。老母の死に目にも会えず、仕事一筋に明け暮れた職場人間であったことは事実です。しかし、それしか私には選択肢がありませんでした。趣味もなく、退職後はテレビでスポーツを観戦し、ベランダの鉢に水をやる。散歩に出る。くたびれると帰ってきて妻に風呂を沸かさせ、夕刊に目を通し、晩飯が済むと、一杯やりながらテレビを見て、飽きたら寝る。これこそが私の夢見てきた無上の生活です。妻はそんな私を無気力だと非難し、朝から晩まで一緒にいると息が詰まるというのです。あまりにも身勝手な言い分だと私には思えるのですが、どこが間違っているか教えてください。