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外山義京都大学教授(居住空間学講座)は建築家として宅老所・グループホームの意義を解き明かした。自宅を開放してはじめた小規模・多機能宅老所『まりやの家』を例に挙げて「宅老所・グループホームは住宅でも施設でもない。また施設でもあり自宅でもある」とその特徴を指摘。その特異性が大規模施設を変革していくと指摘した。

ただ忘れてならないことは「小規模であることの限界あるいは危険」(外山教授)である。大規模施設なら隠れ場所もあろうし、担当スタッフの顔ぶれも交代するけれども、宅老所やグループホームは狭いだけに、お年寄りは逃げ場が無くなるからだ。それだけに家族、ヤクルトスタッフなど地域の人々の訪問とお年寄り自身が隣近所に出ていけるという地域密着の利点の活用が焦点になる。また必要なときに医療が提供できる仕組みも必要である。

フォーラムの締めくくりは山崎課長と「みやぎ夢大使」大熊由紀子さんのアンカートーク。山崎課長は「介護保険の担当になった時からグループホームを保険給付の対象にしようと密かに考えていた」と語り、グループホームの施設基準は特別養護老人ホームよりも「質を高くした」と小規模ホームの将来に期待した。例えば「部屋は八畳と広く取り、トイレは個室に一つまたは二人に一つ。木造を認めたことはお年寄りになじみやすい"家"を用意してほしいから」だ。介護保険の指定基準は「一つだけ。NPOを含めて法人であること」と明言した。

大熊さんが「それにしても小規模施設に、なぜ、それほどの熱意を注ぐのか?」と尋ねると、山崎課長は「今までの老人医療は寝たきり老人をたくさん出してしまって……」と言いかけて、しばし絶句。

目頭をハンカチで押さえた。八○年代の老人医療行政に携わった反省から「一〇年、二〇年先をしっかり見通した誤りのない行政とは?」と悩んできた日頃の思いが一気に噴出したのだろう。全国フォーラムの幕切れにふさわしいドラマティックな情景だった。

 

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閉会後も山崎史郎厚生省老人福祉計画課長をつかまえて、質問攻勢をかける第9分科会の参加者たち。

 

 

 

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