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「四コマ漫画仕立ての作品にしてビデオに撮り、片っ端からテレビ局に送ったんですが、反応はまるっきりゼロ。これはダメだと思いましたね。でも、やるだけやったんだから、もう、しょうがないかなと。ただ、せっかく作ったんだから、一回、外でやってみようと、昨年の二月から公演をはじめたところ、回を重ねるごとに、だんだん、人が集まるようになってきたんです」

とはいえ、警察や公園管理者には無料パフォーマンスという条件でやらせてもらっているので、一銭にもならない。借金は膨らむ一方で、昨年秋にはもはや後藤家の経済状態は崩壊寸前。息子のダンさんは仕事を辞めて父親を手伝っていたが、さすがのピカさんも、「もう、辞める」と家族に切り出したという。

定職に付かず、夢を追い続ける父親を家族はどう見ていたのか。

「それが、息子から『ここでやめたら、今まで何のためにやってきたのかわからない。絶対にやめちゃダメだ』と、逆に反対されましてね」

パート仕事で家計を支え続けてくれた妻の富子さん(五一歳)も、「がんばって」とピカさんを励ましてくれたという。ピカさんの熱意が本物であることを、身近な家族は誰よりもよく理解してくれていた。

「好き勝手なことをやって生きてきたぼくは、世間の常識からみれば、最低の男かもしれない。でも、おやじをなじる家族ではなかったことが救いでした。そして、家族が応援してくれるなら、五〇歳を過ぎても新しいことで世に出ていくことができるんだということを必ずや証明してみせよう。きっと、それが同世代へのエールにもなるはずだと。そう考えたら、顔面紙芝居を続ける勇気もわいてきました。半ば、破れかぶれではありましたが(笑)」

 

地元の人とふれあいながら、公演していきたい

 

ピカさんの顔面紙芝居は、おもしろくて、ちょっとドキッとさせられて、やがてしみじみと考えさせられるネタが多い。そんなところがウケたのだろうか。

 

 

 

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