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ここで留意したいのは、日本の現金給付論議は、その多くが家族への報償的要素で語られているのに対し、オランダの場合は選択の自由として語られていることである。オランダのAWBZ制度の改革は、日本における措置制度から介護保険制度への転換と共通した特徴が見られる。それは、サービス供給者の設定するサービスから、財源の保障による選び取るサービスヘの転換である。また、介護サービス市場の形成と競争原理の導入も共通した問題意識である。

スウェーデンの高齢者ケアの専門家は、「北欧における高齢者ケアの今後の最大の課題は選択の権利である」と述べたというが、経済的に成熟した諸国で、このことは共通のテーマとなってきているのではないだろうか。その意味では、日本の介護保険制度は、かなり先進的な設計となっているといってよい。

ただし、それぞれの国の介護保険の特徴の違いは存在する。なかでも、介護サービスと医療サービスが、連携、統合して提供される必要性は自明のことであるが、財政システムについて見れば、オランダは統合型であり、ドイツは完全分離型(介護保険は医療行為は含まず、医療行為は医療保険から給付される)である。日本は、この分離・融合の方法が中途半端であり、訪問看護も在宅療養管理も入り、療養型病床群という明らかに医療機関であるものも介護保険の給付となっている。

 

 

 

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