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これらは全国レベル−都道府県レベル−市区町村レベルといったピラミッド型に積み上げる組織ではなく、横に広がるネットワーク型の組織である。

1万人市民委員会は、介護保険事業計画・策定委員会への市民参加の方法は公募とし、定数を上回る場合は抽選を原則とするよう働きかけ、また、策定委員会のほかにも公聴会や説明会を開くよう市町村に求めてきた。こうすることによって、地域の医療や福祉の専門職が中心となって策定される事業計画を、少しでも住民サイドに引き寄せ、事業計画に地域で掘り起こしたニーズを反映させようというわけだ。

こうした市町村に対する働きかけの結果、現在、全国の会員のうち二五人余りが地域の策定委員や懇談会委員になっている。埼玉の「1万人市民委員会in三郷」代表の菅原幸子さんも、三郷市高齢化対策懇話会の委員に被保険者代表という立場で選ばれた。公募に応募した八人の中から作文審査を経て選ばれた二人のうちのひとりだ。

菅原さんが出席した懇話会を傍聴した同じ「in三郷」の会員、濱田矜次さんは、「これからは自分たちの住む町の政策策定は行政任せではいけません。ことに介護保険は政策内容の優劣で自治体のサービス水準が大きく変わってくるのですから」と語り、被保険者代表として菅原さんが保険事業の策定にかかわったことを評価する。

これまで政策の意思決定のプロセスに一般市民が参加することはほとんどなかった。現在も数多くの審議会や協議会が「市民」を委員に迎えているが、その多くは行政の筋書き通りに審議を運ぶ文句を言わない人たちだ。そうした意味で、1万人市民委員会が政策策定に"参画"する試みは、介護保険を軸に地方分権を通じて本来の民主主義を我が国に実現する小さいけれども大きな一歩となる。

 

「介護の社会化を進める1万人市民委員会」は、今年九月に第四回目総会を行い三年間の活動を総括するが、その後どのように活動を展開していくか討議・検討中。その活動の中心は、各基礎自治体に移行していくため、市町村組織、都道府県組織は個々の判断によって存続・発展させ、福祉自治体づくりのキーとなっていくよう取り組みを進めることが期待されている。

 

 

 

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