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宅老所は市民が生んだ福祉サービス

 

地域で暮らす高齢者が、通所という形で半日あるいは一日を過ごすための、いわゆるデイサービスの充実は、公的には新ゴールドプランで盛り込まれている。平成十一年の達成目標としては、デイサービス/デイケア合計で一万七〇〇〇か所つまり、小学校区に一か所あたりをめどとして開校することを目標に入浴・食事・日常動作訓練などのサービスを提供している。しかし、平均すれば各市町村におよそ五か所ずつ。自宅から相当遠かったり、あるいは通常は送迎バスなどで通うが、そのバス乗り場までの「足」が手当てできずに利用できない高齢者も少なくない。質的な面でも、本来、こうしたサービスは地域の状況や通ってくる高齢者のニーズに合わせて柔軟に提供されるべきだが、公的な施設ではそれも画一的になりがち…。と、そんな背景から、民間のデイサービスや宅老が広がってきたといえる。

したがって、名称も「宅老所」「託老所」「デイホーム」などとさまざまなら、比較的元気な高齢者のためのサロン的な雰囲気のところから重度の痴呆症の高齢者も受け入れるところまで、その対象もまた、さまざま。だが、いずれも高齢者が自宅にいるのと同じ雰囲気で過ごしてもらえるよう、主催者の自宅の一部を開放したり、民家を借り上げたりして、家庭的な雰囲気を大切にしているところが多いのが特徴で、実際には民営といっても法人格を持たない自主運営がほとんどだ。

「こうした宅老所には、従来の公的サービスの内容に何らかの不安や不満、限界を感じて、市民自らが開設したものが少なくないんです」と『宅老所・グループホーム全国ネットワーク』の事務局長を務める池田昌弘さんも語る。

 

 

 

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