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三重県四日市市八王子にある古い一軒家。『いこいの家』との看板がかかるこの民家には、月に二〜三回、地域の高齢者が集まってくる。ほとんど、生まれも育ちも違う人たちの集まりだが、それが十年の知己よりも親しく喜々としておしゃべりを楽しんでいる。

昼どきになると、ボランティアによる手づくりの食事が運ばれてきた。この日のメニューは、家庭菜園で採れた大根を使ったサラダにみそ汁に煮物。それに季節の炊き込みご飯。みなで食べるご飯は、とびっきりおいしいのだろう、箸がすすむこと、すすむこと。昼食後は、ボランティアのフラダンスのグループが優雅な踊りを披露。ほかにも懐かしい歌を合唱したり、かるたを楽しんだりすることも。

参加者の中にはケアハウスの入所者も数名いるが、「無機質なホテルのようなところで暮らしているせいか、ここは憩えるの。みなさん、温かいし」というおばあさん。「ここに来ると、元気がモリモリとわく」と笑うおじいさん。気の合った話し相手が、仲間がいることが彼らに生きるハリを与えている。

この宅老を運営するのは、在宅福祉サービスを行う市民互助型団体『さわやか福祉ネットワークみえ』(右頁写真)。運営は会員のボランティアによって支えられているため、費用は一回六〇〇円(昼食・送迎つき)。毎回、平均一二〜一三名の高齢者が参加をするという。代表の伊藤マサ子さんによれば、「元気なうちからみなが集って、話し合ったり、運動したりする機会づくりも必要」と、ご主人が趣味で陶芸の工房に使用していた旧宅を改造し、この会を始めたとのことである。

 

 

 

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