従来の周波数変換部は局部発振器にガンダイオードを、混合器にはシリコンのミキサーダイオードを用い、また、これらを接続するための導波管で構成された立体回路を用いていた。
この周波数変換部の、ガン発振器の代わりにガリウム砒素FETの発振器を、カートリッジタイプのミキサーダイオードの代わりにペレットタイプのミキサーダイオードを、導波管の立体回路の代わりにアルミナ基板上に形成したストリップラインによってこれらを接続し、全体を集積化したものを「マイクロ波集積回路(MIC)」と呼び、高周波増幅器を組み込みながら、従来の立体回路系のものよりも小型化されている。
レーダー方程式で示されているように、送信出力を大きくすることと、最小探知信号を小さくすることは同じことである。このことは、マイクロ波集積回路を用いて受信機のNFを改善すれば、マグネトロンの出力を低くしても同じ効果が得られるということになる。このため、マイクロ波集積回路を用いてマグネトロンの出力を低く抑えれば、この部分の発熱も小さく、印加電圧も低くすることができる。したがって、周辺の部品の絶縁耐圧も小さくて済み、全体として小型で信頼性の高いものとなる。
現在のところ、このマイクロ波集積回路のNFは従来のミキサーダイオードに比べて約3dB低いものが得られているので、例えば、5kwの出力のレーダーで10kwの出力に相当する探知能力が得られるということになる。
4・5・4 中間周波増幅器(IF増幅器)
ミキサで作られた中間周波を十分に増幅し、第二検波器でビデオ信号に変換するまでの増幅器で、高周波増幅段を持たない受信機では、この部分が受信機の特性を大きく左右することになる。中間周波数増幅器としては多段の増幅器を接続して所要の利得と帯域幅を得るものもあるが、方法としては複同調増幅器、製作や調整の容易な単一同調増幅器及びスタガー増幅器などが用いられる。
複同調増幅器は、一般には、中間周波に同調する回路が一次、二次とあって、その同調用のコイルで結合したものであるが、結合度その他設計や調整が困難なため、余り用いられていない。これに対しスタガー増幅器は、各段は単一同調回路であるが、その同調する周波数と帯域幅を少しずつつずらし、総合して所要の特性を得る方法である。この方法は広帯域増幅を行うのに有用な回路であり、また、同調周波数が一段ごとに幾らかずつ異なるので、帰還発振を少なくする配置ができるという特長もある。