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TN液晶を単純マトリックス駆動回路と組み合わせた場合、コントラストが低い等の弱点がある。そこで液晶のねじれ角度を180度から270度と大きくし、表示特性を改善したSTN(Super Twist Nematic)液晶が考察された。更に画素数の多い画面に対応するためSTN液晶ディスプレイの画面を上下2つの領域に分けて別々に駆動するDSTN(Dualscan STN)液晶も実用化されている。STN液晶は構造が単純で低コストである点が優れているが、コントラストが低く応答時間が長い、また表示状態が隣の画素に干渉する(クロストーク)問題や表示むらが発生しやすい弱点がある。

もう一つの駆動方式アクティブマトリックス方式は、液晶の一つ一つに専用のスイッチを設けて直接駆動しようというもので代表的なものがTFT液晶である。TFT液晶は一つの画素に一つのトランジスターが配された液晶層自体がコンデンサーの働きを与えられ、与えられた電圧を保持する。一瞬しか電圧を与えられない単純マトリックス方式に比べて、液晶の反応が高速なので、むらのない美しい表示が可能である。TFT液晶はスイッチの導入による電圧保持効果のため、ねじれ角が小さいTN液晶と組み合わせても十分な表示特性が得られる。TFT液晶では画素の数だけトランジスターが必要で、640×480ピクセルの液晶ディスプレイの場合、総数は約30万個(カラーの場合は90万個)に及ぶ。TFT液晶の製造には非常に高い技術と製造設備が必要となる。

ちなみに液晶ディスプレイは液晶自体が発光するのではない。電卓等で使われる太陽や部屋の照明の光を当てることで表示を見る反射型と、ノートパソコン等で使用されるELパネルや蛍光管による照明装置を備えた透過型がある。

(2) 構造

液晶は固体のような結晶構造をもつ有機材で図3・20に示すようにネマチック、スメクチック、コレステリックの3種類の相の配列をもっている。

ネマチック液晶は、棒状分子がある方向に、ほぼ平行に配列しており、個々の分子は長軸方向に比較的自由に移動できる構造である。

スメクチック液晶は平行配列とともに長軸方向にも規則性をもち、層状構造をなしている。

コレステリック液晶も層状構造をもち、各層内で分子が層面に平行に配列し、その配列方位が層間で多少ずれ、全体としてへリカルな構造となっている。

 

 

 

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