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図2・15に、海上実験で得たPPIの映像例を示した。

なお、レーダー受信機のマイクロ波系にイメージ除去フィルター又はSSB Mixerが挿入されていない場合は、その運用周波数によっては2波受信できることになり、20g輝点列ではなく40輝点列の映像になることもある。例えば、レーダーの送受信周波数が 9,375MHzで、中間周波数が30MHz、局部発振周波数が高い方にセットされた9,405MHzであるとすれば、イメージ周波数は 9,435MHzとなり、9,435MHzと9,375MHzの2波分の輝点列が距離方向に交互に現れることになる。いずれにしても、このような多数の輝点列が発見された場合は、その距離の方向に海難が発生して救助を求めていることになる。

レーダー搭載船がその目標に向って接近するに従って、多数輝点列のPPI映像は、音響モニターのところで述べたのと同じ理由で扇状に広がり、至近距離に至るとほぼ360度全周に現れるようになる。(SART側では音が長く続くか、浮遊式の場合は点滅式標識灯がほぼ連続点灯状態となる。)しかし、このままではレーダー側でSARTの方位が分からなくなるので、レーダー受信機の利得調整を絞って方位を再確認すればSARTはすぐ目の前で発見されるはずである。

SARTの新規格では、この装置を起動させてから4日間受信状態を続けた後、繰り返し周波数1,000ppsのレーダーに連続8時間以上の応答送信を行う能力が要求されている。そこで、SARTの専用電池は低温特性や長期保存性等を考慮して、リチウム系の電池が採用される傾向にある。このリチウム電池は大別して二つの系統があり、一つは素電圧3.6Vの塩化チオニール系、他方は素電圧3.0Vの二酸化マンガン系である。前者は電力密度、低温特性、長期保存性等のすべての点で勝っているが、万一容器が破れた場合は、致死量の有毒ガスが発生する懸念があるので、使用環境、取扱者等があらかじめ明確になっていないSARTの場合には、二酸化マンガン・リチウム電池が用いられている。電池は生き物と同様に、低温域で能力は低下するが保存性はよく、高温域ではその逆の傾向にある。このため、SART専用の組合せ電池はこれらの点を考慮して、初期開放電圧が15V程度のものが選ばれている。現在のSARTの電子回路の動作電圧は、5〜6VDC程度であるが、これらを考慮して、将来はより低い電圧になって行くものと予想される。また、電源スイッチは、救命いかだと救命艇の場合にはリードスイッチを、浮遊式の場合は水銀スイッチがよく用いられる。

 

 

 

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