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このような海面における後方散乱波は、入射波と海面とのなす角が小さくなると、鏡面反射的な成分が増加し、後方散乱成分が減少するので、海面反射妨害の効果はレーダーからの距離とともに他の物標からの反射波よりも急速に減衰するという性質を持っている。図8・22はそれを定性的に示したもので、曲線A、B、Cは海面の状態によって海面反射妨害の大きさが異なる状況(A、B、Cの順に荒くなる)を示している。点線で示した曲線Dは浮標のような小物標で、曲線Bとの比較をみると、曲線DがBの上に出た部分では、レーダー受信機の利得を調整することによって、海面反射妨害に打ち勝って小物標の存在を探知することが可能であることになる。

 

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図8・22 海面反射波妨害と小物標からの反射波の距離特性

 

8・8・4 雨、霧などの影響

図8・14ではマイクロ波が水蒸気によって減衰を受けることを示したが、水蒸気が凝結してできた水滴があると、そこでレーダー電波はその一部が反射され、また、吸収されて減衰をする。水滴によるレーダー電波の反射からレーダーが雨域を表示し、その中にある小物標の反射波をマスクしてしまうこともよく知られている。ここでは実験データにより、レーダー電波の雨の中あるいは霧、雪などの中での減衰の効果について見てみよう。図8・23の中の実線はマイクロ波の雨による減衰の実測結果であり、図に示してあるとおり、16mm/hrの強雨から0.25mm/hrの霧雨までを四段階に分けて示してある。また、同じ図の破線は霧(又は雲)の中での減衰を視程別に三種類のデータとして示している。可視距離 400ft(約 120m)のよう霧中では、レーダーはその何百倍もの電波の到達距離を有することになる。

 

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図8・23 マイクロ波の雨(実線)及び霧(破線)による減衰

 

 

 

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