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父親の兄弟7人揃って集まったときに、子供の耳ではっきり聞いていたのです。その時には何のことかわからなかったけれど「保険金は里親に取られるとだめだから、早めに何とかしよう」と相談していたのです。出てくるのは私の悪口ばかりで、もうだれも信用できなくなったと言っていました。

K君の提案で、弁護士に相談してみることにしました。子供の将来のために、亡父の残したお金がいくらかでも返ってくるように何とかしてほしい、とお願いに行ったのです。ところが弁護士料を二回に渡って、50万ほど支払ったにもかかわらず、私の手元には一円も返ってきません。本当に軽はずみなことをしたと、今更ながら後悔しています。

しかし、保険金はないほうがよかったかもしれないとも思います。なまじ大金があると、人の心は惑わされます。「お母さんが使ったお金は、僕が必ず働いて返すから、お母さん長生きしてね」とK君は言ってくれます。弁護士に対しても「自分には里親のお母さんしかいません」とはっきり言っていました。この言葉を励みに、自分は生きている限り、今まで育てた子供たち以上に、K君の後見人として頑張っていきたいと思うのです。

 

 

 

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