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モンゴルの草原を走る筆者

 

孫の内の何人かは、その家の子供かも知れないし、息子夫婦も、別なゲルに住んでいるので、本当は他人なのかも知れない。

ゲルで、お茶をのみ、チーズを食べ、草原に出て子馬に跨り、写真を撮り、子供たちと駆け回る。ジャマジーさんが一生懸命、私たちに気を使って遊んでくれているのが良く分かる。こちらも、楽しいのだが、やはり本当のことをいうと、仕事の邪魔をしているんじゃないかと、所在無かったり、申し訳なかったりする。

しかし、八時頃、遅い夕方が訪れると、そんな気分は吹っ飛んだ。放牧に出していた動物たちが帰って来るのだ。

山羊の群れ、羊の群れ、牛の群れ、馬の群れ。

さっきの息子の他にも何人かの男たちがそれぞれ馬に乗り、または歩いて、動物たちをゲルのそばの柵の中に追い込む。ジャマジーさんはあっちこっちと飛び回り、いろいろ指示を出したり、山羊の乳を絞ったり、女性たちも小さな子供たちも皆、忙しそうに働く。さっきまでゲルの前でのんびり昼寝をしていた犬たちも、腕の見せ所とばかりに動物たちを柵に追い込む。

地平線から昇る青々とした月明かりの中、ゲルの周りは戦場のように騒がしい。

山羊八二匹、羊一七七匹以上、牛四一匹、馬一九頭。何も手伝えない情けない男が数えた動物たちの数だ。

十時頃になって、やっと食事。主にウルムという牛乳の膜や、チーズといった乳製品が主で、質素なものだ。しかしこの頃になって、何故か急に訪問者が増える。

 

 

 

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