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2-3 姉子の浜との関わり方の方向性

 

姉子の浜は、海岸線を主体とした玄海国定公園、二丈町の中でもより特別な存在であると言えるだろう。それは自然資源としての希少性を持ち合わせているということである。鳴き砂の浜であるということだけでなく、自然の砂浜の原型の面影を保ち続けているということや、地理的な位置など比較的好条件にも恵まれているということがある。そのようなかけがえのない自然としての価値に加えて、地域資源としての活用を目的として見た場合にも、その可能性は秘められていると言えるだろう。

現在の玄海国定公園や二丈町における海岸域の活用状況を見てみると、魅力として利用されている要素はいくつかあげられる。一つは玄界灘に育まれた魚介類等の海産資源である。またもう一つは青い空、白い砂、美しい夕日、情緒をかき立てる松並木、遠浅の砂浜や干潟などの海岸景観である。そして玄界灘の強い波や海辺特有の風も魅力の一つにあげられるかもしれない。これらの魅力に対して、外部からの訪問者を引きつけることができるかもしれない。また地域住民にとっても魅力として享受の対象となるかもしれない。

以上にあげた魅力は、姉子の浜においてもあてはめることが出来るだろう。しかし例えばこれらの魅力を享受する手段として海洋レクリエーションを行おうとする場合、鳴き砂という資源に対してはマイナスの要因となる。すなわち姉子の浜においては、上記の三つの魅力も持ち合わせており、さらに鳴き砂という様々な可能性を秘めた要素を持ち合わせているにもかかわらず、それらは互いに打ち消し合う危険性を含んでいるということである。

鳴き砂の浜である姉子の浜を地域資源として有効に活用するには、前述のような危険性を十分認識した上で、その利用法の熟慮が必要であると言える。かけがえのない自然の象徴的存在である鳴き砂を維持し続けている仕組みを理解し、阻害要素への対策を講じることが大切である。その希少性や脆弱性などを利用した、自然環境への理解のきっかけとするための環境教育の場としての利用がその活用法として有効であると言える。また都市民にとって、より自然性が高くその象徴的なものを実感できる場としての価値、またその空間の中で地元住民と交流することの出来る場であるという価値などがある。このような価値をしっかりと定義し、それを軸とした活用のための方策を考えることが必要であるだろう。

 

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図2-20 姉子の浜の価値付け概念図

 

 

 

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