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QOLと緩和ケアにおける研究

 

Quality of Life(QOL:生命の質、生活の質)は、がんの専門家が化学療法などの患者への影響をみるために測定され、主に身体的な側面から評価されていた。しかし、終末期の患者では、肉体的にはかなり衰弱して死が間近であっても、精神的には充実しているという人がいる。タワーズ先生は、QOLの評価には、精神的、社会的、実存的な側面からも評価する緩和ケア独自のものが必要であることを強調され、マギル大学で研究開発されたQOLの質問紙(資料)を紹介された。しかし、QOLは、個人的で、変化しやすく、その評価はなかなか難しい。コーエン医師は、患者に直接インタビューし、患者が、「身体症状がコントロールされていること」、「どのくらいよい状態か自分が感じられること」、「自分自身をコントロールできていること」などを、QOLとして大切なものとしてあげたと報告している。このように緩和ケアにおける研究では、質的調査、つまり患者の話を聴き、記録し、分析する方法の確立が必要である。終末期の現場にリサーチは適さないという人がいるが、よりよいケアの提供のために患者から学ぶリサーチは重要であると述べられた。

 

ケア提供者のケア

 

毎日苦しむ人をケアしているとケアを提供する者の心の中に苦しみが蓄積してくる。人の苦しみに対してオープンで、センシティブで、慈しみの心を持ち続けられるためには、自分の苦しみを否定しないこと、それをだれかに分ち合うことが必要である。ロイヤルビクトリア病院の緩和ケア病棟では、週1回、チームメンバーが集まって互いの気持ちを分かち合う会が持たれているという。その会を主催するモンティニー先生は、分かち合いを行う時に大事なこととして、互いを尊重し、畏敬の念を持つこと、他者の経験に心を開くことなどを指摘された。また、日常的な話、社交的な集まりも大切であると述べられた。

ケア提供者は、自分で自分をケアすることも重要である。参加者からは、同僚と話す、家族に話す、ペットとの触れ合い、また、視点を変えるなどさまざまな意見が出された。モンティニー先生は、自分にとって何が可能かを探すこと、限界を知ること、自分の才能を探し出すこと、そして、自分の希望を持ち続けることをあげられた。また、自分自身のケアのためには自分を知ることが大事であり、自分の中に、美しい自然や音楽、希望などいろいろなものを持つ。豊かなものがあれば外に反射することができると加えられた。

 

以上、お2人の先生による合同講義と、モンティニー先生の講義を中心に報告した。

 

 

 

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