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普通の日本茶を差し上げただけなのですが。どんな小さなこともそれぞれ役割があることを痛感いたしました。それからは大切にていねいにお茶を淹れるようにしています」というのです。一杯のお茶によって患者さんも家族も本当に喜ばれたのです。

「あなたはご自分のボランティア活動を通して、どのような期待、あるいは今後の希望をもっておられますか」については、その方は、「とくに期待や希望はもっておりません。ボランティア活動は私の日常の一部です。そよ風のような活動であればと思っています」と書いています。いいですね、肩が凝らずに。

こういう一杯のお茶によってそのご家族は、ある意味では癒されたのですね。

 

ひと掬いの雪

 

私は2、3年前には、週1回ピースハウスの夜の当直をボランティアでやっていたのですが、ある女性の患者さんががんで腹部にはひどい転移もあり、最後の段階になっていてほとんどものも食べられない状態でした。その方はご主人を亡くされて、2人のお嬢さんのうち1人も亡くされて、もう1人のお嬢さんが付き添っておられました。私が当直の夜、病室に行きましたところ、衰弱して、つらそうで、虚無的といいましょうか、何の望みも失ってしまったように見受けられました。付き添っているお嬢さんも本当に疲れ果てて、それでも付き添っていなければならない、しかも自分独りになってしまうという見るからに心細そうな感じでした。

 

 

 

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