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したがって、母親の存在がバウンドリーそのものになりますから、母親自身の精神状態が非常に重要になるのです。

この時期には、バウンドリーの形成は子どもではなくて母親がカギとなります。もちろん、父親が育てていれば父親ということです。一番身近にいる人ということです。それがバウンドリーの土台を築くのです。

 

c. 子どもには万能感が必要

また、この時期の子どもは“万能感”をもっています。子どもはおなかがすくと、大体泣きます。親は、おなかがすいたのだと思って、おっぱいをあげたりミルクをあげます。そのときの子どもの体験を解説するなら、おなかがすいて泣いたのでお母さんがミルクを与え、その結果、おなかがいっぱいになったとは思いません。乳児にとっては、「おなかがすいたと感じると、おなかがいっぱいになった」という体験なのです。また、おしめが濡れて気持ちが悪いと泣きます。お母さんがおしめを替えてくれます。そうすると気持ちがよくなります。しかし乳児にとっては「気持ちが悪い」と感じるだけで、気持ちがよくなるという体験です。「おなかがすいた」と思うだけで、おなかがいっぱいになるわけです。こんな素晴らしいことはありません。これは“万能感”ということです。もしこれが私たちなら、「お金が必要だ」と思ったらスーと空からお金が飛んでくるような体験です。「お寿司が食べたい」と思ったら、お寿司が目の前に出てきたら素晴らしいですね。これが万能感です。この時期の子どもにはこの万能感が必要なのです。乳児がもし「この人は私の親だけれどもあまり頼りがいがない。あしたのミルク代は大丈夫だろうか」と心配したら、子どもは大きくなれないでしょう。現在なら「リストラにあっているのではないか」とか乳児のときからそのような心配をしなければならないなら、それこそ顔にはもう相当しわができてしまうのではないでしょうか。

 

 

 

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