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3. バウンドリーの具体例

 

バウンドリーとしての機能をもつ6つの具体例を紹介しましょう。

 

1) 皮膚、身体

それでは、具体的にはどんなものがバウンドリーとしての機能を果たすのでしょうか。第1番目のバウンドリーの機能を果たすのは目に見えるもので“皮膚、身体”です。皮膚はちょっとでも傷ついたら血が出てしまうほど薄いものです。その皮膚がなかったらどうなるのでしょうか。手と手が、腕と腕が触れるなら、それこそくっついてしまいます。皮膚がないと、自分を他人と区別することができなくなります。満員電車で1時間ぐらい他人と皮膚が接触していたら、片方の人が駅で降りようとしたら一緒について行かないと、とても痛くて離れられなくなるでしょう。皮膚というのは、このように他の人と自分を区別する非常に重要な目に見えるバウンドリーなのです。

しかし、このバウンドリーが侵されることがあります。たとえば身体的な虐待、あるいは性的な虐待などは、これが侵されてしまうのです。

最近、虐待が非常にふえていますが、目に見える物理的な面からバウンドリーは侵されていくことになります。多重人格者には、子どものときに虐待を経験した人に多いことがわかっています。虐待の中で非常な恐怖を覚えるわけです。大人であれば外の世界に逃げれば何とかなると思うのですが、子どもにとっては家庭というのは自分の世界のすべてですから、虐待されている自分をある意味では否定してその恐怖から防衛していくプロセスの中で、人格に乖離が生じてくるのです。

 

 

 

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