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特に、行政の発想の原点を国ではなく、住民と自治体に据えようとすれば、住民と自治体が責任をもって必要な行政の優先順位や密度を確立できるようにしなければならず、そのためには行政のみならず財政の自主性確立が不可欠となる。

地方六団体の提言が、この側面を強調し、国と地方の財源配分の見通しを前提に、地方税の税目と税率の自主決定、その不足分を補てんする地方交付税の地方への帰属と自主的配分権の付与、補助金の圧縮、起債の自由化と弱小市町村のための基金創設などを要求したのは、単なる量的な財源の充足にとどまらず、国の財政枠組に拘束されない質的な予算決定の仕組みを意図したものといってよい。現状のように補助金や起債、あるいは地方交付税から他律的に施策の選択が左右されることなく、本当に住民の意思を忠実に反映したものにするためには、とにかく財政の自主性確立が大前提であり、その意味では今回の改革が触れることのできなかったこの分野に改革のおのを加えていかなければならない。

それとともに、これまで常にナショナルミニマムということで正当化されてきた国の関与が、必要不可欠な部分と過剰な部分と密接に結び付いているのをどう分離し、不要有害な後者をいかに徹底して排除していくかも残された重要問題である。またそれと同時に、研究者の側も具体的事務についての実証的分析を精力的組織的に進めて、その理論武装のための有力な手段を準備することが望まれる。ともあれ、ここ数年の大変な努力の成果である分権改革を後戻りさせないためにも、立ちはだかる課題をひとつひとつ克服して地方自治の確立に関係者が総力を結集していかなければならないことだけは確かである。

 

プロフィール

 

佐藤 竺(さとう あつし)

成蹊大学名誉教授

 

昭和26年 東京大学法学部政治学科卒業・同大学院入学

27年 高崎市立短期大学助手、29年専任講師

33年 成蹊大学専任講師、35年助教授、41年教授

平成5年 山梨学院大学教授

8年 駿河台大学教授、10年退職

 

著書

 

日本の地域開発、現代の地方政治、転換期の地方自治、地方自治と民主主義、川崎市議会史I・II、鎌倉市議会史(共著)、相模原市議会史I(共著)武蔵野市百年史III

 

各種委員等

 

日本学術会議会員、地方自治総合研究所長、四日市大学顧問、駿河台大学大学院客員教授、日本行政学会・日本地方自治学会・まちづくり学会各顧問、入間市専門委員、日本広報協会技術顧問、あしたの日本を創る協会常任理事等

 

 

 

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