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コンスタンツ市・ジップリンガー・ベルク浄水場での概要説明

 

環境とエネルギー政策に対する熱意と実行力はもとより、長期的な計画性をもったプロジェクトを可能ならしめる背景に、これを支える住民意識と行政側の哲学を実感しました。

また、環境対策の一環としての交通対策では、公共交通機関である路面電車・路線バスを拡張するため、「ベンツで市電に乗り継ごう」とのキャンペーンを行う一方、車の市内乗り入れを制限するために、市街地の駐車場料金を引き上げ、周辺部に安い駐車場を新設する等「パーク・アンド・ライド」方式を推進するほか、市電の軌道部分に芝を張って路面の緑化を図るなど様々な取り組みをしています。

 

(2) コンスタンツ市

 

フライブルグから更に130kmほど南に位置するボーデン湖は、オーストリア・スイスとの国境を形成するとともに、ヨットや観光船が浮かぶ観光地でもあり、ここから流出するライン河の両岸にまたがるのが、国際都市コンスタンツ市です。

アルプスを源とする良質・天然の水源「ボーデン湖」に着目したのが、北方100kmほどの所に位置する南西ドイツのシュツットガルト〜ポルシェやメルセデス・ベンツ等の自動車工業の町であり、歴史的に「水の乏しい都市」として知られる〜であり、当市が中心となって、20世紀半ば、ボーデン湖水道事業組合をつくり、長さ135kmにも及ぶ導水管を建設して、ここに良質の水源を求めたのです。

日本では、古くから地下水に恵まれ50〜60年前までは井戸や湧水を活用することができたこともあり、今日でも、遥か遠くに水源を求めると言うよりは、近隣の河川や湖等の表流水を塩素消毒により利用するという考え方が主流ではないかと思います。

しかし、ボーデン湖北西部のジップリンガー・ベルク浄水場を訪問したところ、驚いたことに、ボーデン湖水道事業組合では、湖面から取水するとプランクトンや浮遊物質が多いことから、湖面下60メートルで取水してポンプアップした上で浄化しています。

もともと水質が良い上に、表流水ではなく自然の浄化作用を最大限生かした湖中水に水源を求めるという姿勢に対して、「水」に対する思想の違いを実感するとともに、さすがに場長が誇らしげに説明していたように、貯水槽の柱等に水垢もつかないほど透明度は高く、湖水面が余り汚染されていなかった20世紀半ばまでは塩素消毒なしに全くの無処理で給水していたという歴史にも素直に頷けるところでありました。

日本からの視察は私たちで2回目ということもあり、視察後、水道事業組合の厚生施設で開いていただいたレセプションでは、職員の方々の手作りによる心のこもった昼食を頂き、さらに意見交換の場を持つことができました。

言葉は通じなくても同じ公営企業に携わる者として、場長のひたむきな姿勢と誠実さは、深く私たちの記憶に残るものであり、最後は「日本から1万400kmを経て国は違っても水源に対する哲学を勉強させていただいた上、心暖まる対応に感動しました」と挨拶をした上で、日本の習慣として「万歳三唱」を披露して幕を閉じました。

「ヨーロッパではEC統合による競争市場が拡大する中で、上水道事業の民営化議論はないのか」との問いに対し、「住民の生命を守るためにも、人の口から入って出ていくまでは、行政の守備範囲であるから大丈夫」との答えに、改めて考えさせられました。

 

2 スイス・バーゼル市

 

ドイツを後にしてライン河の流れに沿って下っていくと、アルプスの少女ハイジを彷彿させるような小高い丘や谷間など緑鮮やかな酪農地帯を抜け、やがて医薬品など科学関係企業の町として世界的にも有名な国境都市バーゼルに達します。

 

 

 

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