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協働の経験の積み重ねしかない

 

これまで、述べてきたことを踏まえて、パートナーシップによるまちづくり力の育て方の仕組みを整理すると、次のようになる。

すべての問題解決の流れは、課題の発見・解決の方法の検討(この二つが合わさってPLAN)、実施(DO)、成果の評価(SEE)というステップを踏む。これまでのまちづくりにおいては、このPLAN→DO→SEE→の各ステップは行政の専管事項であったが、それが制度疲労がうまく機能しなくなった。行政と住民が各ステップのプロセスを協働するパートナーシップの仕組みが必要である。

この協働のアクションは、行政、住民、双方から起こしていってよいのだが、専門性、資金力、情報収集能力を持っている行政の側からまず、住民に向かってパートナーシップアクションを開いていく姿勢が重要である。

このときに行政が基本的に発揮すべき能力は、必要な情報はすべて公開する開放性と住民と話し合いが出来る説明責任性である。これがパートナーの間に欠かせない「相互理解」「相互尊重」をもたらす。

また、住民のほうではこれまで各種の団体は、いわば省庁の縦割りのパイプにつながった個別の利益追及団体が多くあった。それに加えて最近では、こうしたパイプと無縁な「環境」「福祉」「防災」といった新しい課題に対応した「テーマ」型活動グループが登場してきた。それ以外に地縁を基盤にした町内会、自治会といった旧来型のコミュニティ組織がある。

こうした地域内の活動グループは、協働の問題解決の場に参画すると、ともすれば相反目する場合が多く、まだ相互理解や尊重の間柄にはなっていない。こうした壁を乗り越えるのも、地域の課題を協働で解決する経験を積むことしかなく、互いに別の活動目的を持つ住民グループ間のパートナーシップをどうつくるか、「まちづくり力」の育成における大きな問題である。

 

プロフィール

斉藤睦(さいとう・むつみ)

○1945年生まれ

○北海道出身

○地域総合研究所主任研究員(地域プランナー)

○都市から農山漁村まで幅広い地域の計画づくりに携わる。参加による計画づくりに力を入れ、施設づくりワークショップ、住民わいわい懇談会、フォラソン(長時間住民討論会)などの手法を使いながら、住民と行政のパートナーシップによる計画づくりを試みている。

○携わった主な計画・会議運営

・『川崎区民のまちづくり宣言』(神奈川県川崎市川崎区まちづくり白書)

・『キラリたかつ』(神奈川県川崎市高津区まちづくり白書)

・『エコ・パートナーシップ東京会議運営』(東京都)

・『コロジータウンうちこ』(愛媛県内子町総合計画)

・『パートナーシップアクション22』(埼玉県吉川市女性行動計画)

・『活性化シナリオ・歩きたくなるかたやまづ』(石川県加賀市)など

 

 

 

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