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3)1994年でみると、年金受給者のうち47.7%が地区疾病金庫に、24.6%が職員補充金庫に、14.1%が同業疾病金庫に、5.9%が連邦鉱山労働者金庫に加入している。一方、年金受給者を除く被保険者は、38.7%が地区疾病金庫に、40.3%が職員補充金庫に、10.3%が同業疾病金庫に加入している。

4)同時に、介護にたいする給付も、改善された。社会的入院はドイツにおいても大きな問題であったが、在宅介護にたいする給付が疾病保険のメニューに加わったのである。その内容は、介護している者が長期休暇やその他の理由により一時的に介護ができない場合、疾病金庫は1年に4週間を限度として介護要員を派遣する。病院を除く自宅以外で介護を受ける場合にも疾病金庫がその費用を負担する。給付限度額を年間1800マルクとされ、この在宅介護給付は1989年から導入された。また、1992年から、1回1時間とし、月25回まで介護要員の派遺サービスを受けるか、あるいは月400マルクの現金給付を支給することもできるようになった。

5)土田[1995]238頁。

6)ここでは、介護保険の財政調整と1978年から1994年までの年金受給者の財政調整について、その類似点および相違点を明らかにするため、それぞれについて説明をする。

a)介護保険と疾病保険の財政調整の共通項と相違項は次のとおりである。

[共通項]

1]民間介護保険と公的介護保険間で財政調整をしない。

[チ?羯濔

1]公的介護保険の財政詞整は、全介護保険について全ドイツで行われる。疾病保険は旧西ドイツ地域と旧東ドイツ地域内で行う。

2]財政調整の対象は、法定給付と給付費の3.5%に相当する事務費である。それらの全費用は各介護金庫が保険料収入の割合に応じて負担する。したがって、1%の保険料率は、1978年から1994年までの年金受給者医療費の財政調整における連帯保険料率に相当する。連邦社会保険庁は財政調整を管理する。各金庫の実際にかかった介護費用がその金庫の保険料収入(プラス準備金)に不足する場合には、調整基金より不足分を受け取り、各金庫の実際にかかった介護費用がその金庫の保険料収入(プラス準備金)を超過する場合には、それを調整基金に拠出する。調整基金の財源は、この拠出金と年金金庫からの保険料である。疾病保険では事務費は調整対象にならない。

3]民間介護保険は、民間疾病保険とは異なり、保険料率には上限があり、公的介護保険の最高保険料率を超えてはならない、とされる。そのため若年加入者の保険料率が、リスクに応じた保険料率よりは高くなると予想される。また、被扶養者である18歳未満の子は保険料を納める必要はなく、介護給付は受けられる。一方、被扶養の配偶者は、リスクに応じた保険料を払わなければならないが、夫婦の保険料率が公的介護保険の最高保険料率の150%を超えることはない。したがって、民間介護保険では、被扶養の子や高齢化などの差による格差を是正するために財政調整が行われることになっている。

 

参考文献

1.  足立正樹『現代ドイツの社会保障』, 法律文化社, 1995年

 

 

 

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