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また、その際、リスク(工事や管理瑕疵に起因する損害賠償責任、天災等不可抗力に起因する損害賠償責任、工事の遅延による来客見込み数の減少など)の洗い出しも必要となる。

さらに、官側が将来のリスクを分担するためには、契約の締結に際して債務負担行為予算を計上する必要があるが、将来的な予見が困難であるリスク負担をどのような形で担保していくのかが課題となる。

○ VFMの評価にあたり、PSCの試算、リスクコストの算定等市として新たな手続きを経ることが必要となる。

○ 今回のペデストリアンデッキのように本体(商業業務施設)の附属的施設を整備する場合で、既に本体の実施主体が決まっている場合には、実質的に他の民間事業者の参入が困難と思われるが、民間事業者の選定は原則「公開の競争」により行われることとされており(PFI推進法第4条)、いかにして競争の原理を担保し、より高いコストパフォーマンスを得ていくか(より小さなコストでより高度なサービスの提供を)が課題となる。

 

3 おわりに―PFI導入に向けての課題―

 

従来のような経済の恒常的な拡大成長が期待できない中で、都市の活力や魅力の向上を図り、次の世代が夢や希望を抱くことのできる杜会を築いていくためには、従前の制度や手続き等とは発想を異にする新たな行財政システムを構築していくことが重要であるが、社会資本の整備・運営等をPFI方式により実施していくことは、効率的な行財政運営を推進していくうえで、非常に効果的な手法であると言える。

したがって、本市においても、今後、PFI導入のための必要条件や導入効果等を整理しながら、具体的なプロジェクトヘのPFIの導入を検討していきたいと考えているが、その際、次の点に留意する必要がある。

すなわち、PFIの先進国であるイギリスにおいては、近年、PFIによる効果よりも、むしろその弊害の方がクローズアップされ、PFI見直しの動きも出てきているという点である。

そもそもPFIは、公共サービスに市場原理を導入して経済的効率性を追求する手法として生み出されたものであるが、経済的効率性を重視しすぎるあまり、公共サービスの質の低下、福祉や教育分野などでの「社会的弱者の切り捨て」を招いているというマイナス面があるとか、PFIは一般的に公共セクターに比べ資金調達コストが高く、かつ投資回収を短期間で行うためどうしても品質を犠牲にする傾向がある、あるいは、計画の策定段階における外部コンサルタント費用等が公共セクターに比べ割高になりやすいなどの指摘である。

したがって、PFIの導入を検討するにあたっては、PFIそのものに内在する問題点を十分に認識し、個別のプロジェクトごとに適用の適否を詳細に検証することにより、真に最も効果的な事業手法と認められるものについてのみ適用していくことが肝要である。そして、何よりも大切なことは、PFIは行政や民間企業の利益を最優先として行われるものでなく、あくまで市民生活の利便性や安全性の向上を第1に、その導入を図っていかなければならないということである。

 

 

 

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