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信託期間中は、土地・建物とも所有権は信託銀行に移るが、信託終了後には、土地・建物とも無償で元の土地所有者に返還される方式である。

2) 特徴

信託法上の規定によって、議会の議決、調査・監査、報告等を通じて事業計画・事業運営等に対して土地所有者の意向を十分に反映させることが可能であり、開発目的も達成しやすいとともに、委託者の立場で協議しながら進めることができるのできめ細かな対応も可能な方式である。

信託期間は、任意に定めることができるが、本市においては30年としている。信託法という担保により、当初の開発目的を長期間継続でき、公共が将来にわたり主導権を持てる利点があるとともに、信託期間中も公共は実質所有権を留保でき、かつ信託期間終了時には公共に無償で返還されるので、後述する新借地方式のように借地権発生による公共の権利制限の課題を解決する点では、利点があると考えられる。一方で、事業実績主義をとるため、配当金等を含めて事業リスクは土地所有者が負うことになっている。

3) 課題及び留意点

委託者の意向等を反映させた開発が可能であり、さらに信託期間終了後に事業の債権債務も信託財産として土地・建物と同時に帰属するので、事業の推移に大きく左右される。一方で、事業実績主義をとっているため、事業がうまく軌道にのり運営できれば配当金とともに、将来の開発利益も還元されるが、その逆の場合には大きなリスクを土地所有者が負う危険性が指摘されている。

したがって、当方式の採用時には、堅実な経営計画等の事業の経営性、周辺地域の活性化への貢献等の見極めが重要となる。

4) 事例

現在、本市においては、港区弁天町駅前、中央区西心斎橋など、6地区で土地信託事業を行っている。ここでは、前年度にも紹介したが、北区扇町と浪速区交通局霞町車庫跡地の2事業について紹介する。

 

1]北区扇町開発土地信託事業

本市工業研究所跡地を中心とする扇町地区は、地下鉄やJRの駅に近く、幹線道路に面し、交通アクセスに優れた地区で、隣接する扇町公園の再整備にあわせ、新しい地域イメージとにぎわいの創出をテーマに、子どものための遊体験学習施設「キッズプラザ大阪」を中核に、「放送メディア施設」や飲食店舗等のサービス施設「キッズモール」から構成される複合一体施設を、「扇町キッズパーク」として土地信託制度の活用により整備したものである(図-1)。

 

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図-1 扇町地区の位置

 

 

 

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