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3. これまでのまちづくり手法とPFIについて

大阪市計画調整局企画調整部政策調査課長 高内悦次

 

1. はじめに

21世紀を目前にして、少子・高齢化、情報化等が著しく進展し、また景気の低迷が長引くなど、我々を取り巻く社会経済環境は大きく変化している。一方、時代の流れも「地方分権」へと向かい、自治体の主体的なまちづくりができるよう地方への権限委譲が進むとともに、グローバル化の進展に伴う国境を越えて人・モノ・情報などが流れ、都市間の交流が盛んに行われるなど、来るべき21世紀はまさに都市と都市が直接その個性や魅力を競い合う都市間競争の時代であるいえる。

このような背景のもと、本市においては、来るべき21世紀を展望した、「大阪市総合計画21」に基づき、まちづくりを推進してきたところである。21世紀の大阪の発展を確固たるものとしていくためには、個性を活かしたまちづくりを可能とする各種規制の緩和や地方分権の推進などを求める一方、大阪の独自性を発揮して、新しい産業などを生み出し都市機能を活性化していく新たな仕組みづくりが極めて重要であると考えている。

また、長引く景気の低迷は、企業活動や市民生活のみならず、本市のまちづくりに対しても大きな影響を与えており、ライフスタイルの変化に伴う市民ニーズの多様化とともに、その変化を的確に把握しながら、今後のまちづくりを進めていく必要があるといえる。

まちづくりを進めていくうえでは、市内に点在する工場跡地や公共施設等の跡地などの未利用地の有効利用があげられ、市域の狭い本市にとっては極めて貴重な空間であり、特に公有地の利用に当たっては、当該地並びに周辺地域を含めた地区の特性や開発ニーズに対応した適切な開発手法を選択し、活用していくことが、総合的・地域的なまちづくりを進めるうえで重要な視点であると考える。

このような視点から、本市では土地価格を顕在化させずに土地を有効かつ高度に利用する手法として、これまで本市において採用されてきた土地信託方式、新借地方式、第3セクター方式などの各種の手法について紹介するとともに、現在注目されているPFI方式に対する考え方などについて述べることとする。

 

2. 土地信託方式

1) 仕組み

土地信託方式は、昭和61年5月の地方自治法等の改正によって、公有地についても適用が可能となったことから本市でも採用されてきた方式である。その仕組みとしては、まず、土地の所有者が信託銀行等に土地を信託し、信託銀行等は信託目的にしたがって、土地の造成や建物の建設、所要資金の調達、当該不動産の賃貸・分譲を行い、これによって得た収益から資金返済や維持管理などの諸経費及び信託報酬を差し引いた残額を土地所有者に信託配当として交付する。

 

 

 

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