基調講演
講師 立松和平氏
●テーマ 「自然に学ぼう」
僕の一年は、
奈良の法隆寺の行から
始まるんです。
どうもみなさんこんにちは、立松です。僕ちょっと頭を坊主にしてまして、見ればわかるんですけども、別に悪いことをしたわけじゃないんで、その言い訳から入ります。
毎年お正月になりますと、僕、奈良の法隆寺に入るんです。そしてそこで行をするんですね。僕は小坊主です。お坊さんの一番下っ端の小坊主で。むかしはね、その金堂というところで行をするんですけれど、金堂十僧といって十人しか、お坊さんが入れなかったんですけども、今は法隆寺のお坊さんが十人いないんです。八人くらいしかいないんで、僕らのようなアシスタント(偽物なんですけども…お坊さんとしては)が、お手伝いをするようになっています。
そして、毎日ちょっとずつスケジュールが変わるんですけども、朝、五時か五時半に起きまして、金堂に行きます。金堂というのは、釈迦三尊像とか国宝のたくさんあるところで、法隆寺の真っ暗な誰もいないお堂に入って、何をするかというと、まずお灯明をつけるんですね。小坊主ですから準備をするわけです。法隆寺ですから火打ち石かなんかで、カチカチッってやるかと思ったら、チャッカマンです。灯明皿に菜種油が張ってあってそこに"灯芯"が浸してあるんですが、そこにカチャッとチャッカマンで点けるんです。それをどんどん、どんどん、点けていくんですね。そうすると光がぼーっと浮かび上がって、釈迦三尊像とか阿弥陀如来像とか薬師如来像とか壁画とか、そういうものも一緒に浮かび上がって、それはとってもいい時間です。そこで、僕はお坊さんと一緒に声明をやるんですね。今年、1,233回目の行です。古いでしょ、奈良時代からずっと続いている行なんですよ。