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第1章 中球磨地域の目指している将来像

 

本調査研究は、前述のように法定協議会を設置し合併に向けての検討が進みつつある熊本県中球磨5か町村を対象として、合併を契機とした新たな自治体振興策を検討することを目的としている。

自治体振興策に関する調査研究にあたっては、地域づくりの主体となるその地域に住んでいる人々の望んでいる将来像を把握し、研究の前提とすることが必要である。すなわち、地域づくりの中心となる主体はその地域に暮らす住民であり、住民自らが主体的に取り組もうとする地域振興策でなければ、実際には効果が上がりにくいからである。

そこで本章では、先ず、対象地域となる中球磨5か町村の人々が、どのような将来像を思い描き、目指しているのかを整理することとする。

 

1 若いまち 豊かなまち そして、夢ふくらむ「中くま」

中球磨5か町村では、平成10年度に中球磨5か町村合併問題協議会(任意協議会)の企画専門部会を中心に、5か町村合併後の20年後の将来像を検討した『中くま町(仮称)将来ビジョン(以下、『将来ビジョン』という)』を、取りまとめている。

この『将来ビジョン』では目標として『若いまち豊かなまちそして、夢ふくらむ「中くま」』を掲げている。

本調査研究を進めるにあたって、中球磨地域の人々が、どのような将来像を目指しているのかを端的に把握しようとするとき、この『将来ビジョン』に掲げられている目標『若いまち豊かなまちそして、夢ふくらむ「中くま」』が、その重要なキーワードとなる。そこで以下では先ず、この目標として掲げられているキーワードの目指しているものを明らかにしていくことにする。

先ず、「若いまち」とは、単に人口構成が若い社会づくりを目指すという意味だけではない。例え、若者が多くても夜間人口のみのベッドタウンでは、はつらつとした活気は出てこない。若さとは、「変化を恐れず、進取の気風とチャレンジ精神を持つ」ことである。中球磨地域においても、今後、否応なしに少子・高齢化が進んでいくと考えられるが、そうした中で、「若いまち」を目指すということは、進取の精神に富んだ活力の溢れるまち、すなわち気持ちの「若いまち」を目指すということにほかならない。換言すれば、若者だけでなく中高年層も、新たなライフスタイルを確立し、生き甲斐を見いだしていけるような「円熟のまち」を目指すということである。旧来の5か町村という枠組みを乗り越えて新しい町をつくるというこの合併の試みそのものにも、「若いまち」の理念である進取の精神が現れているのである。

次に、「豊かなまち」とは単に経済的な豊かさ、所得の高さのみを目指すものではない。高度経済成長期を通じて、わが国は経済的な豊かさを一途に追求してきた。その結果、確かに国民所得は上昇し、我々の生活も物資的には恵まれるようになってきたが、今日の社会においてもなお、国民は豊かさを実感できていないという調査結果が出されている。そうした原因として、個々人の心のゆとりや、安らぎ、地域社会のあたたかい連帯感、助け合いの精神など、金銭には換算できない心の豊かさを求める視点が欠けていたことが挙げられる。中球磨の目指す「豊かなまち」とは、単に経済的な面だけではなく、地域に住む人々の心が「豊かなまち」、あるいは生活の質が「豊かなまち」なのである。

 

 

 

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