日本財団 図書館


2]中部圏の市町村が一体となって、すなわち、なぜ圏域の課題として人材の育成や確保に取り組まなければならないのか。

この二つの疑問に応えることが、本調査研究の基本的視点を説明することにつながろう。以下に、前節との重複するところもあろうが、人材の育成・確保や高等教育機関の機能・役割の充実などをめぐる今日的動向を踏まえながら、それらの明確化を試みる。

 

(1) 人材の育成・確保への公共による対応

今日、高知県では、高知工科大学(第2編参照)を核に、「産学官連携」により、「情報生活維新の実現を目指すマルチメディア社会実験」としてアジアハブネットワークヘの取組が推進されている。こうした取組を例示するまでもないかもしれないが、「産学連携」で終わることなく、「官」すなわち「公共」を明確に位置づけ、地域の経済的発展を目指す動きが増えてきている。すなわち、産業経済面からの地域活性化に関し、公共は直接関わるのでなく、民間が活躍することを期待しての条件や基盤などの整備、つまり、「黒子役」に徹すべきと言った従来からの発想や取組のままでは、自らの地域で具体的成果を期待できないことが痛感されるようになったことによる。ちなみに、国として情報通信、マルチメディア分野の産業に力を注いでいるとともに関連ベンチャービジネスが盛んになってきたドイツでは、今日、深刻な人材不足がネックとなっており、その育成を怠ってきた国の責任を問う声が産業界からわきあがっていると、最近、NHKの番組で報じられた。

つまり、今後の産業経済の動向を見据え、人材育成や確保を既存の教育・研修システムにいかに組み込むか、また、新たなシステムをどのように構築するか、これらについて、公共による積極的取組が求められる時代が到来している、と言えよう。

上述の産業経済分野同様、従来公共の役割として期待されていたことは、民間サイドによる種々の人材育成・確保を支援・協力するために、相談・指導や施設・設備の提供と言った民間による取組に資するための社会資本の整備・充実にとどまっていた。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION