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2 残された課題

しかしながらその反面、本調査研究において十分果たせなかった事柄も多い。モデル地区の検討を通じて地域特性に配慮した「健康福祉資源の創造と活用」の方策をサービス分野別に探る、という本調査のアプローチ方法を前提としても、以下の点については十分詰めきれなかった。

その第1は、代替案として提示したシステムが有効かどうか、その改善効果はどのようなものか、といった点に関する具体的な検討まで踏み込めなかったことである。とくに、事業コストヘの影響についての検討が不十分に留まった。

第2に、地域特性(とくに、健康福祉資源の配置状況と、住民意識を反映する福祉ニーズの現れ方)がサービス供給構造に一定の影響を及ぼすことは確認できたものの、データ不足等により要因連関の解明にまで至らず、したがって、それぞれの代替案の地域特性との適合性について十分に検証できなかったことである。

また、代替案の検討対象から除外した他の在宅福祉サービスについての検討が、今後の課題として残されたこともいうまでもない。

本調査研究が以上に述べたような一定の限界を内包していることを踏まえると、これらを参考に各市町村が代替システムの構築を検討する際には、以下の点に留意していただく必要があろう。

第1に、各市町村における代替案選択の基本的な目的を明確にすること、すなわち、サービスの量的充足、質的改善、機能維持、機能改善、もしくは住民満足のいずれを重点目標とするのか等をあらかじめ明確にしておくことが肝要である。

第2に、本調査で示された各サービスのいくつかの代替案と、上記の基本目標並びに当該地域の資源特性との適合性を検討し、相対的に適合性の高い代替案を識別することである。できれば、本調査の考え方を参考としながら、より適合性の高い代替案を独自に構想することが一層望ましい。また、今後、介護をはじめとして社会福祉分野への民間の一層の参入が見込まれることから、代替案を構想する際には十分留意する必要がある。

第3に絞り込まれた代替案について、事業コストのシミュレーションをはじめ、「福祉文化の土壌の形成」といった数値化の困難な指標も含めた「費用対効果分析」を行い、より現実的・実践的な政策形成・政策改良に結びつけていくことが望まれる。

本調査の限界としては、アプローチ方法そのものに由来する部分もある。すなわち、本調査の基本的なスタンスは、各市町村の行政担当者の立場に立って、その地域の資源をどのように健康福祉分野に活用できるか、という視点からサービス別の改善策を構想するところにあるが、その結果、上述した「福祉文化の土壌の形成」には欠かせないもう一つの視点である「社会形成」あるいは「地域経営」というトータルな視点からの考察が希薄となったことである。具体的には、個別サービスごとにではなく、当該地域の福祉基盤を構成する「福祉人材の養成」や「地域内連携」などの仕組をどう構築するか、といった課題に対する検討である。

例えば、これまで地域内の福祉サービスを中心的に担ってきた社会福祉法人や社会福祉協議会は、個々の具体的なサービスの実施主体として今後も存続し、機能することももちろん必要なことであるが、むしろ今まで以上に地域の福祉人材養成やレベルアップを図り、多様な福祉サービス主体間の連携・協力をコーディネイトする役割にも力を注ぐべきではないか、といったことである。

 

 

 

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