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また、対策の必要性を地方公共団体の基本的な計画に記載することによって、全庁的に地球温暖化対策を意識しながら施策を推進することが可能になると考えられる。

なお、例えば地球温暖化対策として、一定の温室効果ガスの排出抑制の施策を採用する場合においても、その施策が他の面で環境への負荷を増加させることがないよう、総合的に見てより環境への負荷の少ない施策を検討することが必要である。

すなわち、本来の施策目的との関係において、温室効果ガスの排出抑制度、他の面での環境への負荷、費用、労力、住民意識への影響、事業実施の容易さ等について、地域の自然的社会的条件をふまえ、総合的に勘案しながら、施策選択がなされるべきことを十分留意しておく必要がある。

二つは、住民、NPO、事業者などの非行政部門との適切なパートナーシップ(協力・連携関係)による地球温暖化対策への取組である。

厳しい財政状況の中で行政が従前のようなやり方ですべての地球温暖化対策を予算の範囲内で行うことは、困難である。調整役は地方公共団体が行うとしても、地域における各主体が地球温暖化問題を自らの課題として意識して、それぞれの能力を結集して具体的な取組を進めることが、今後の地域における公共施策の進め方の中心となることが期待される。

地域環境の保全・創造のために、行政が自ら取り組むだけではなく、身近な環境問題に住民の関心を惹きつけ、住民、事業者、NPO等が幅広く参画するようなやり方をとることが必要である。

三つは、地方公共団体も一つの事業者として地球温暖化対策に率先して取組むことが求められており、地域へのアナウンス効果も含めて地球温暖化対策の具体的な取組を自ら積極的に実施することが必要である。

例えば、公用車の運行に伴う温室効果ガスの排出抑制の場合、自動車の効率的運用、公共交通機関の利用、民間運輸事業者の活用、そして公用車の低燃費・低公害車への切り替え等、庁内で議論を高め、地域の実状に応じた取組を進めることが必要である。経済的運転のための機器についても、住民へのアピールと職員の意識啓発に資するならば、導入を検討するに値する。

具体的に、庁舎管理の場合における議論を整理すると、庁舎管理における省エネ対策は、消費量自体を抑制することであるが、その際、電気をこまめに消すなどの節約により職場環境を低下させるのは消極的な手法であり、省エネ対策としては、あまりにも単純すぎる。むしろ、効率的、経済的な機器の活用を図ることにより適切な照度、室温を確保する等、積極的に省エネ時代の豊かな職場環境を考えていくことも必要である。これによって、職員の省エネイメージを積極的なものに変換する契機ともなる。昨年度の報告書で紹介したESCO事業は、このような考え方に基づいた省エネ手法である。

ESCO事業は、1970年代末からアメリカにおいて誕生投資額が1994年現在で4億5千万ドルという省エネを専門とする成長産業であるといわれている。わが国においても、今後のビル管理の省エネ化に大きな役割を果たすことが期待されるところであり、地方公共団体としても、率先して取組む課題であり、その導入は検討するに値すると考えられる。

地方公共団体におけるESCO事業の実施例として、三重県庁舎や三鷹市庁舎の高効率照明化が紹介されることがあるが、いずれも通産省や環境庁の補助を受けて単年度事業として省エネ型照明設備に変換するとともに、後年度複数年にわたって、エネルギー消費削減というサービスをESCO事業者が保証する契約を一体で締結したものである。

 

 

 

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