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イ 自治体への土地利用・交通補助をパッケージプログラムへ

従来の地方自治体の土地利用・交通事業に関する国の補助は、道路、街路、軌道、再開発事業など部門別に行われてきた。しかし、温暖化防止の観点からは、部門毎に独立に予算化されると互いに相矛盾する結果を生じることが往々にして起こる。例えば、都市のあるコリドアの公共交通機関分担率を上げるためにLRTを導入しようとする時に、それに先行して道路整備に予算が付いてしまうと、後でLRTが完成してもその効果は打ち消されてしまう。現状の予算制度では、道路予算が鉄軌道予算に比べて、国全体では2桁程度上回っている。そのため、このようなことは、至るところで起こりうる。このような無駄を防ぐためには、国の交通関連補助金の配分に際して、自治体が地区全体の総合的土地利用・交通パッケージとしてシミュレーションしたものに対してのみ、補助金を出す仕組みが必要である。これは、今日における都市計画の自治体への権限委譲の観点からも望ましい。

 

(3)土地利用に関する施策

ア 交通需要発生量に基づく立地誘導・規制

交通需要発生の根本原因である土地利用を、既存の交通インフラ・ネットワークシステムに適合するように配置することは重要である。オランダでは、以前より、ABCポリシーと呼ばれる施策が実施されている。これは、事業所の立地を交通インフラの能力に応じて誘導するためのものである。従業員が一定以上の大事業所は、鉄道の結節点(A立地)にしか立地できない。一方、物流の多く発生する業種は幹線道路の結節点付近(C立地)にしか立地できない。その他の事業所は、鉄道と道路の交差する地域(B立地)に誘導される。

このように、オランダでは、都市計画側がはっきりと立地を誘導していく仕組みができている。一方我が国では、都市計画側は、交通の発生に対して、立地段階で何も言えない仕組みになっている。そのため、多くの自治体では、新規に立地する大型店などのために交通渋滞が引き起こされた場合には、税金で集めた金を投入して、付近の道路改良を余儀なくされている。これでは、受益者(原因者)と負担者の間の不公平が大きすぎる。

ABCポリシーのような立地誘導規制は、温暖化ガス削減対策上、極めて有効である。これは、条例の範囲内で十分できるはずであり、是非早期に実施すべき施策の1つである。

 

イ 鉄軌道等、公共交通未整備地域への大規模店立地規制

大規模ショッピングセンターは、立地による影響の最も大きい施設の1つである。もとより大規模ショッピングセンターは、郊外の広い敷地を確保して大駐車場を整備し、自動車利用を前提としたまとめ買いの買い物形態として、アメリカより入って来たものである。しかし、我が国では往々にして、道路インフラの整備が不十分である場合が多く、周辺の渋滞によって大気汚染、温暖化ガスの大量排出に大きく寄与してしまっている。

 

 

 

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