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(4)通勤手当にエコ・マネーの導入 −2番目の交通行動への対策−

地方自治体が事務・事業を行う場所への職員の交通行動も事務・事業のための交通行動同様、様々な交通手段を利用して行われている。ここでは、温室効果ガスの発生量を抑制するために最も効果的と考えられる自家用車による通勤交通を対象に対策の提案を行う。自家用車による通勤交通を対象とした温室効果ガス発生量の抑制対策としては、

1] 自家用車利用から公共交通機関、あるいは徒歩・自転車利用への転換

2] 自家用車の相乗り、共同利用(平均乗車人数の増加)

3] 自家用車の効率的運転

が主なものであろう。このほか、通勤交通そのものを削減できる在宅勤務やサテライト・オフィス勤務の導入も提案されている。多くの地方自治体で住民や民間企業をも含めて実施されているノーカーデーの導入も、上記1]を実行するための第1歩としての対策と考えることができよう。

通勤交通は比較的対象として明確で単純な交通行動であるにも係らず、効果的な温室効果ガス発生量抑制対策が実施され、成果が得られているとの報告は少ない。この大きな理由として、地方自治体ではほとんど通勤費が通勤者の自己負担ではなく、地方自治体が負担していることを挙げたい。勿論、公共交通機関が整備されている大都市では通勤費の支払いを公共交通機関を利用した場合の費用とすることで、自家用車による通勤交通の発生を抑制することに役立っていると言える。

しかし公共交通機関の整備が悪く、交通行動のためには自家用車の利用しか選択の余地がない地方自治体では、通勤費の支給が大都市の地方自治体の場合とは逆に対策を難しくしている。例えば、自家用車による通勤を前提にガソリン代相当分を通勤費として支給されていた人が温暖化防止のために自転車通勤に転換したとしよう。この場合、通勤費の支給は大幅な低下、例えば駐輪代のみ、あるいはゼロということになると考えられる。もう1例、自家用車の相乗りで通勤する場合を考えてみよう。自家用車を提供した方の職員の通勤費の支給額は、この場合、特に変化することはないと考えられるが、相乗りした方の職員の通勤費の支給額はどうしたら適切なのであろうか。相乗りをした職員が受け取っていた自家用車を利用して通勤した場合の通勤費を自家用車を提供した方の職員に支給するのもおかしいし、さりとて相乗りをした職員がそのまま受け取るのもおかしい。しかし相乗りした職員もいつもいつもタダで相乗りというのでは気が引けてしまうし、朝は相乗りさせてもらいたいが、帰りは仕事が遅くなるので相乗りが利用できない場合もある。一方で通勤費を支給する地方自治体の事務側にも、上記のような様々な状況に対応して適切に通勤費を支給するルールを定めることは難しいので、相乗りを特に進んで職員に奨める気にならないかもしれない。

以上のように通勤費の支給、特に自家用車による通勤を対象として通勤費が支給されている場合には、自家用車以外の交通手段を利用した通勤に転換させる対策を実施する際に大きな影響を与えていると考えられる。こうしたことを考慮すると、自家用車の利用を前提とした通勤費の支給方法を変更することが難しいと考えられる地方自治体に対しては、当面の温室効果ガス抑制対策として、以下の対策を妥当な対策として提案したい。

1]地方自治体が職員の通勤用の自家用車のために整備している駐車場の有料化

2]自転車通勤を推進するために、駐輪場の整備、着替えのためのシャワー室等の整備

 

 

 

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