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これは市民サイドからすると、せっかくその他のプラスチックの分別収集に協力しようとしても、これは対象外、これは汚いから十分洗って出して下さい、ということになってしまう。

さらに、指定法人に引き渡すに際しても、その他のプラスチックの場合、例えば家庭から出るその他のプラスチックというのは本当に小さなものが多く、厳密にはラップ、菓子の袋等も対象になるが、そのようなものを圧縮したところで、簡単な梱包、バインドでは不十分との懸念もある。そこで、若干の熱を加える等の加工をすれば圧縮梱包も容易になるし、あるいは粉砕してしまい袋に入れて引き渡すことも考えられるのだが、このような方法は規定外となっており、各市町村とも苦慮しているのではないかと考える。

 

(エ)「容器包装リサイクル法」が抱える問題

上述のとおり、容器包装リサイクル法に沿って事業を行うほど多くの問題が生じることが考えられるが、何よりもまず分別収集をすればするほど経費がかかることである。さらに、ペットボトルの状況に見られるように、容器包装リサイクル法がともすれば大量生産、大量消費、大量廃棄の免罪符になってしまい、リサイクルとともに本法の趣旨でもある廃棄物の発生抑制につながらないのではないかと懸念する。

しかしながら、現状では多くの課題を抱えているものの「容器包装リサイクル法」が、一般家庭から出るごみに対して事業者責任を明確にし具体化したことは非常に画期的なことである。今後、この法律の円滑な運用と併せて、本法の精神がごみの発生を限りなく少なくし、省エネルギーの推進と環境への負担の少ないサイクルの構築を目指す包括的な法律(「循環経済法」のようなもの)の制定に引き継がれていくことを強く望むものである。

 

(4)おわりに−市民、事業者の取組に対する効果的施策−

今後、地方自治体が地球温暖化対策などの地球的規模の環境問題に対して、実施すべき有効な施策として、市民や事業者、環境NGOとのパートナーシップによる取組が最も重要であり、その中で行政としての役割は、市民、事業者等の取組に対する各種の支援の充実である。その1つとして、環境問題についての取組に関して積極的に取り組んだ者に対してはメリットのある経済的インセンティブ、反対に取り組まないとデメリットになるような経済的インセンティブを与える方策が効果的ではないかと考える。なかでも、直接的財政支援がより有効であるが、昨今の厳しい財政状況では限界がある。その点では税制面での措置が大変効果的である。例えば、環境負荷低減型の要因については税を軽減したり(グリーン税全優遇措置)、逆に環境に負荷を与えるような要因に関しては課税(炭素税、環境税)し、これによる税収は環境保全施策に運用する(目的税)等である。ただし、このような施策は一地方自治体として実施する施策としては非常に難しい面がある。

今後は、国とも一体となって効果的な社会システムの確立に向け、自治体として積極的に関与していくべきであるとともに、あらゆる主体がそれぞれの役割と責任分担のもと、持続可能な社会の構築に向けた取組を展開していくことが、21世紀を迎えるにあたっての最大かつ喫緊の課題ではないかと考える。

 

 

 

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