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C-アウトプットとは、ある政策を実施する結果として得られる政策目標であり、通常はある種の満足の水準を表現する指標で代理される。それに対してD-アウトプットとは、最終的な政策目標であるC-アウトプットを得るための具体的な施策や事業を表すものである。その意味では、D-アウトプットはあくまで最終目標を達成するための手段であって、それ自体の獲得が目的というわけではない。

高齢者ケア政策に当てはめてみると、「高齢者の自立」がC-アウトプットであり、それを実現するための一連の高齢者ケアの施策がD-アウトプットということになる。介護サービスや介護施設、あるいは医療サービスや保健サービスなどは、いずれもD-アウトプットである。人々は高齢者ケア・サービスの整備拡充(D-アウトプット)を望んではいても、介護されること自体を望んでいるわけではない。本来的には、寝たきりにならずに豊かで健康な老後生活を送れること(C-アウトプット)を望んでいるはずである。

したがって、高齢者ケアの施策(D-アウトプット)を実施しても、それが高齢者の自立(C-アウトプット)につながっているかどうか、すなわち一連の施策の組み合わせが目的達成のためにどれだけ寄与しているかが問われなければならない。これが政策の「有効性(effectiveness)」の問題であり、政策評価に関わってくる問題でもある。しかしながら、現実には高齢者の自立(C-アウトプット)を具体的にどう把握できるかという困難な問題もあり、現状ではこの概念を用いて福祉や介護政策の有効性を論じるまでには至っていない。

 

(2) 高齢者ケア・サービスの種類

高齢者ケア・サービスといっても具体的なサービスをあげていくと、家族介護やホームヘルパーなどの在宅ケアから始まり、老人ホームやデイサービスセンターなどでの施設ケア、また送迎サービスや訪問入浴サービスといった介護補助に当たるサービスまで多種多様である。高齢者ケア・サービスをより広義に捉えれば、電話相談などによる情報提供や介護指導、住宅改修(たとえば段差をなくしたり、手すりつけること)、介護や看護の研修制度なども、上述したD-アウトプットにあげることができるだろう。高齢者の自立を支援するための施策ということで考えれば介護サービスに限らず、医療サービスや保健サービス、さらには高齢者へ教育や余暇・スポーツを提供する施策もD-アウトプットに含めて考えるべきだろう。

このことは、高齢者ケア・サービスの整備・拡充と単純に言っても、具体的にどういった種類のサービスや施設をどのように組み合わせれば最終目標の達成に最も有効であるかという、政策全体のシステム設計が重要であることを示唆している。

 

 

 

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