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高出力舶用ディーゼル機関のピストン精密鋳造技術の研究開発

 

三井造船株式会社

 

1. 調査研究の目的

 

近将来的に、陸上輸送から海上輸送へのモーダルシフトがなされようとしている。このため高速船用主機としての舶用ディーゼルエンジンには、平均有効圧の上昇、ピストン速度の増大、シリンダ内最高圧の上昇などによる高出力化と共に小型軽量化が要求されている。これらを実現するためには、エンジン性能の向上と共にエンジン構成部品の軽量化、特に可動部品であるピストンの軽量化が必要不可欠である。本調査研究では、大形中空構造部品に関する精密鋳造技術を確立してピストンの軽量化を図り、エンジンの高速化及び軸受等の信頼性向上を実現する。さらに、ニアネットシェイプによる加工工数の低減を図り部品のコストダウンをはかることを狙う。

 

2. 実施内容

 

実施項目と実施内容を下記に示す。

 

(1) 鋳造材料の調査、選定

 

ディーゼルエンジンの高出力化、小型軽量のための薄肉化に伴い、ピストン材料としては高強度材料が要求されている。材料要求値をもとに先ず強度面からピストンに適用可能な鋳造素材を選定した。

鋳造素材としては材料強度に加えて引け巣、ガス欠陥、鋳造割れが発生しにくいことなど良好な鋳造性が要求される。候補材料の鋳造性は鋳造試験により評価した。すなわち、真空溶解・雰囲気鋳造した後、放射線透過試験により引け巣、ガス欠陥、鋳造割れなどの鋳造欠陥の発生状況について調査した。

 

(2) 精密鋳造用中子、鋳型の調査

 

精密鋳造用セラミック中子原料について調査するとともに、サンプル中子を用いてピストン精密鋳造への適用可能性について調査した。さらに、精密鋳造鋳型原料について調査し、鋳型原料を用いて精密鋳造鋳型を試作した。試作した鋳型について初層の層間強度、表面粗さ、鋳型強度などの諸特性を調査した。

 

(3) 最適鋳造方法の調査

 

鋳造品の欠陥を除去し高品質化を図ることを目的に、HIP処理(熱間静水圧加圧処理)の適用を検討した。HIP処理とは材料の変形抵抗がほとんどない高温下でArなどの不活性ガスを圧力媒体として高圧を等方的に負荷する処理プロセスであり、鋳造品や焼結品の内部欠陥除去や粉末材料の加圧焼結などに適用されている。処理最適条件を把握するため、鋳造欠陥を模擬した直径8mmの半球状人工欠陥を有する試験片により最適温度を実験的に評価した。同時にHIP処理による材料強度の変化を調査した。

強度特性に及ぼす溶解方法の影響について文献調査し、さらに、大気溶解による実験結果をもとに溶解プロセスを選定した。

また、遠心鋳造法や吸引鋳造法の適用可能性と最適鋳造方法の調査を行った。

 

 

 

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