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Fig.5.30 6005A-T5合金系のSi量と疲労強度の関係35)

 

Mg2Si量のバランス組成に近い6061合金においても、再結晶粒組織が粗いと、結晶粒界開口は顕著となることが知られている32)。また、使用する溶加材としては4043合金の方が5356合金よりも優れており、前者では結晶粒界開口を発生せず33),34)、かつ、結晶粒組織とは無関係に疲労強度も若干高い値が得られる34)

Fig.5.30は、6005A-T5合金系中空押出形材から採取した厚さ4mm及び8mmの突合せ継手*5.16について、Si量と応力比R=0.5における繰返し数N=107の応力範囲(非破壊率P=95%)?刄ミ(107)の関係である35)。Fig.5.30(a)は溶接のままなので、余盛止端の応力集中の影響が含まれている。Fig.5.30(b)は余盛を削除した場合であるが、0.2〜0.5mmの目違いを持ち、疲労き裂はそれによって生じた縁(edges)から発生している。

これらの実験結果から、単独に結晶粒界開口の影響を取り出すのは難しいが、静的強度の場合も含めて結晶粒界開口はき裂発生に関与しないようである。一般的にいえることは、1]及び2]合金はPhoto.5.2(a)に示すように粗粒組織なので、大きな結晶粒界開口を生じる傾向を持ち、3]〜7]合金はPhoto.5.2(b)のように非再結晶組織なので結晶粒界開口を生じ難い。3]、4]合金と比べて5]、6]合金が高い疲労強度を持つのは、断面の縁(fringe)に生じた再結晶組識が小さなためである。厚さ4mmよりも8mmの方が高い疲労強度を持つのは、3]〜6]合金を検討すると、断面の縁における再結晶組織層の厚さがほぼ同等なことによる。

 

*5.16 合金としては、Fig.5.30内に示したように1]〜9]の計9合金(ただし、7]合金は疲労強度が未測定なので記載せず)を用いている。1]〜4]合金はSi量の影響を検討するためのもので、Mn及びCr量は規格の下限に近い。5]〜7]は6005A合金、8]は6106合金、9]は6008合金である。

いずれも幅283mmの中空押出形材から試験片を採取しており、厚さ4mmはV型開先の片面一層、厚さ8mmは同片面2層のそれぞれミグ自動溶接継手である。

*5.17 鉄道車両用6N01-T5合金中空押出形材について調査した文献29)の場合、再結晶組織と非再結晶組織に区分されたが、前者は粗粒組織ではなく、また、後者では断面の縁に薄い再結晶組織層を持つものもあった。溶加材として5356合金を用いたミグ溶接継手において、両組織とも熱影響部におけるミクロ割れは観察されなかった。ちなみに、6N01合金の代表的化学組成は、Al-0.6%Si-0.65%Mg-0.1%Mn-0.1%Cuである。

 

 

 

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